イム・サンス監督の映画『古い庭園』(4日公開)の主演俳優チ・ジニ。1980年代の韓国社会を背景にした映画は、恋することさえも難しかったその時代をヒョヌという人物を通じて描いている。ヒョヌ役を演じたチ・ジニに、昨年12月26日弘益大学近くのスタジオで会った。映画に描かれた80年代の風景は、彼にとっても見覚えのある話だ。1990年度に大学に入学したチ・ジニは「大学1年生の時に警察に捕まって夜明けに釈放されたことがある」と自然にその時代を振り返っていく。しかし、映画に共感するために敢えてその時代に対する経験を共有する必要はない。チ・ジニは「映画そのものだけを見てほしい」と言う。ファン・ソギョンの小説『古い庭園』を映画化した作品だが、彼には映画はどこまでも“別個の世界”なのだ。

チ・ジニ の最新ニュースまとめ

「経験していないからと、映画を難しく理解する必要はありません。そのままヒョヌとユニという人物を通じて、こうやって暮した人達もいるんだなと思って、共に痛み共に悲しむだけで十分です。その時代的な背景のせいで、政治的な意味で映画を観る必要はありません」。映画はヒョヌとユニの心痛い愛を、とても乾いた視覚で追っていく。ヒョヌは自身をかくまってくれた田舍の学校の美術教師ユニ(ヨム・ジョンア)と恋に落ちるが、民主化運動が盛んだった80年代は、彼を愛の前だけに置いてはくれない。結局、信念を選んだヒョヌは17年という刑務所生活をすることになり、2人の愛も長く彷徨うこととなる。ある種、その時代によって個人的な人生が傷つけられたように見えるが、映画は洗練されてストーリーを描いていく。チ・ジニは「それがイム監督の力」と言い切る。

「泣く泣く通俗的に流れることができたのに、そういう風にはしませんでした。とくに、1人の男と愛に落ちて、その愛を守り貫いたユニの姿は本当に魅力的です。ユニは最後までヒョヌに生きて行く理由を残してくれた人で、とくにヒョヌが娘と再会する最後のシーンは、イム監督の“色”を充分に感じることができる部分です」。ユニという人物に比べてヒョヌの心理状態は細密に描かれていない。彼もまた、最初の頃は「弱い」という思いが真っ先に浮かんだとか。しかし、完成された映画を見れば見るほど、それが合っているという思いになる。

「ヒョヌは、17年間外の世界とは遠く離れた状況で生きた人物です。時間が止まっているというのがピッタリな表現です。当然、感情表現はぎこちないかもしれないし、感情起伏があまりないとも言えます。それを治癒する過程が、映画の中で描かれるのです」。一番大変だった部分は“かつら”だった。年老いた姿まで演じたチ・ジニは、最初はかつら姿が慣れず、かなり苦労したという。それでも楽しい経験でもあり、60代以降には白髪で暮したいとか。

映画の中のチ・ジニは、ドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』やCMで見せる真面目なイメージとは大きく異なる。『古い庭園』では世の中に妥協しないヒョヌ役として、『女教師の密かな魅力』(2006)ではチンピラ男ソッキュ役を、2月に公開予定の『壽(ス)』では殺し屋として登場する。全く異なる姿を見せたいという欲を抑えたくない上、本人自らも変身が面白いという。

今年の希望は何だろうか。「僕の演技で、観客たちが様々な経験をできれば嬉しいです。どこに行っても似たような車を見てもつまらないじゃないですか。少しでも異なるキャラクターで観客と会いたいんです」


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