キム・ジョンウン の最新ニュースまとめ
北朝鮮は新型コロナの世界的大流行を受けて2020年1月末に早々と国境を封鎖した。貿易の9割以上を中国に依存してきたが、国境封鎖による物流遮断で経済活動や住民生活に大きな影響が及んだとみられている。中国の税関当局の貿易統計によると、昨年1~11月の北朝鮮の中国からの輸入額は約2億2500万ドル(約260億円)で、前年同期比ほぼ半減となった。コロナ禍前の2019年と比べると9割減だった。
しかし、今年1月、約2年続けてきた国境封鎖措置を解除。中朝国境を行き交う列車の運行を再開させた。これによって中国から食料などが入るようになり、北朝鮮の市場も再び活気を取り戻したが、この状況は長くは続かなかった。5月、北朝鮮は国内において新型コロナの感染者が確認されたことを初めて発表した。それまで北朝鮮は「感染者ゼロ」を主張し続けてきただけに、この発表は世界に衝撃を与えた。世界では北朝鮮の「感染者ゼロ」の主張には懐疑的な見方が強かったが、キム・ジョンウン氏自らが感染拡大を認めたことから、感染状況はかなり深刻なのではないかとの見方も広がった。
北朝鮮は再び国境を封鎖。物流が滞り、頼みの綱である備蓄米も一気に減っていった。朝鮮日報の取材に応じた北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋は「住民は現金を持っているが、食料そのものが手に入らないため飢えに苦しんでいる」と状況を明かした。
国連傘下の食糧農業機関(FAO)と国連児童基金(ユニセフ)が昨年12月に公表した「2021年アジア太平洋地域の食糧安全保障と栄養」によると、2018年から2020年までの北朝鮮の栄養不足人口の比率は42.2%で、アジア太平洋地域38か国の中で最も高かった。報告書は「北朝鮮の住民のうち1090万人が栄養不足に苦しんでいる」とし、「これは2000年から2002年の間の820万人と比較すると270万人も増えた」と明らかにした。
北朝鮮では1900年代、大飢饉に見舞われた。住民は家財道具を売り払って食べ物に替えたりしたが、配給システムも崩壊したことで、約100万人以上が死亡したとされる。96年、朝鮮労働党は「苦難の行軍」とのスローガンを掲げ、飢饉と経済的苦境を乗り越えようと住民に呼びかけた。
ここ最近の北朝鮮の食糧難は、「苦難の行軍」当時の状況に匹敵するほど深刻化する恐れがあるとの懸念が出ている。状況を悪化させている理由の一つはやはり新型コロナだ。朝鮮日報によると、中朝国境が再び封鎖されたことに加え、慢性的な経済難が重なって、一部地域では既に餓死する住民が出ているという。北朝鮮は最近、中国に列車の運行再開を求めているが、北朝鮮でのコロナ感染拡大を理由に、今度は中国側が慎重な姿勢を見せているという。
また、同紙は「季節的な要因も重なっている」と指摘。北朝鮮の農業事情に詳しいシンクタンクの元代表は、同紙の取材に「小麦や大麦の作付け面積は増えているが、今年は梅雨の時期に生産量が例年よりも少なかったとみられる」と話した。
こうした状況に、韓国大統領室の関係者は先月25日、記者団から「北朝鮮の状況をどのように見ているか」と問われ「これまで対北制裁による困難に直面し、そのような状況で新型コロナが発生したことが、さらなる圧迫と苦痛を生じさせたと認識している」と述べた。
ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は先月22日、統一部(部は省に相当)のクォン・ヨンセ(権寧世)長官に対し、北朝鮮が実質的な非核化を受け入れた場合に提示する「大胆な計画」について、現実性ある方策を入念に準備するよう指示した。「大胆な計画」とは、5月10日の尹氏の大統領就任式の際、演説で明らかにした対北朝鮮政策の概念。尹大統領は演説で「北朝鮮が実質的な非核化プロセスに着手すれば、国際社会と協力し、北朝鮮の経済強化や生活向上につながる大胆な計画を提供する用意がある」と述べている。
北朝鮮の労働新聞も、現在の北朝鮮国内の状況について「共和国の行路で今日のように非常に厳しい局面はなかった」と伝えている。一方、北朝鮮は現在、2017年9月以来、7回目となる核実験に向け秒読み段階ともされる。金総書記は深刻な食糧危機から住民を救うため、尹大統領氏が示した「大胆な計画」に耳を傾ける気はないのか。
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