<W解説>韓国に数多く残る地雷、北朝鮮から流れ着いたものでも爆発・負傷すれば韓国が賠償=ソウル中央地裁の判決(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国に数多く残る地雷、北朝鮮から流れ着いたものでも爆発・負傷すれば韓国が賠償=ソウル中央地裁の判決(画像提供:wowkorea)
北朝鮮から流れてきた地雷が韓国内で爆発して負傷した場合、国(韓国)が賠償すべきだという判決がソウル中央地裁で出された。観光では地雷によって民間人が死傷する事故が後を絶たない。韓国国防部(部は省に相当)は地雷除去作業を進めているが、依然、約80万発の地雷が韓国内に残っているとされる。

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 韓国メディアによると、70代の男性は2020年7月、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)コヤン(高陽)市のキンポ(金浦)大橋付近で釣りをしようと準備をしていたところ、北朝鮮とつながっているハンガン(漢江)を流れてきた地雷に触れ、爆発により心臓損傷などの重傷を負った。

 男性と家族は「地雷は韓国軍が埋設したものだ」と主張し、韓国政府を相手取り損害賠償訴訟を起こした。国立科学捜査院が鑑定した結果、地雷は北朝鮮軍が使用する地雷M14と判明した。M14は1955年に米国が開発した対人地雷。重量は108グラムと軽量のため、川の流れで数百キロ流されることもある。本体がプラスチックでつくられているため探知が難しく、除去が困難な地雷の一つとされている。

 この訴訟でソウル中央地裁は国(韓国)への賠償責任を一部認定。男性と家族に慰謝料と賠償金8000万ウォン(約800万円)余りを支払うよう命じた。判決理由について裁判所は、この地域ではこれまで、韓国軍による対人地雷が2回発見されていたにも関わらず、国は注意を呼び掛ける表示の設置を怠ったと指摘。「地雷が爆発すると予想できたのに地雷捜索と除去をしなかったのは義務を果たしてない」とした。賠償責任を一部認定としたのは、事故現場が釣り禁止区域であったことを考慮した。

 判決のニュースを伝えた韓国紙の中央日報は、今回の裁判所の判断について「国は危険から国民を保護する義務があり、地雷の設置主体とは関係なく国民の身体の安全を保護すべきということだ」と解説した。

 韓国では豪雨による土砂崩れなどで地雷を含んだ土砂が漢江を通じて観光に流れ込み、民間人が負傷する事故がたびたび起きている。

 先月3日には、北朝鮮との軍事境界線に近い韓国北部のカンウォンド(江原道)チョロン(鉄原)郡で対戦車地雷とみられるものが爆発し、韓国人男性1人が死亡した。朝鮮半島を韓国と北朝鮮に隔てる軍事境界線付近には、朝鮮戦争(1950~53年)当時や、その後から現在に至るまでの休戦中に多くの地雷が埋められ、付近には現在も200万個を超える地雷が埋まっているとされる。地雷問題は南北融和を図る上で立ちはだかる課題の一つにもなっている。

 韓国メディアによると、男性は当時、梅雨の大雨による水害の復旧作業を行っており、小型の掘削機を運転していたという。一帯は大雨の影響で土砂が道路に流れ込む被害が起きていた。

 昨年6月にはソウル近郊のキョンギド(京畿道)コヤン(高陽)市内の漢江河口のチャンハン湿地で作業をしていた男性が地雷を踏んで足首を切断する事故が起きた。

 漢江沿いで南北軍事境界線一帯から流れてきた地雷による爆発事故が相次いでいることを受け、高陽市は今年1月、市内を22キロにわたって流れるハンガンの川沿いを釣り禁止区域に指定した。

 南北の共有河川などでは、これまで集中豪雨の後などに韓国軍による地雷の探索・除去作業が行われてきた。2020年8月に韓国で大きな被害が出た豪雨災害では、直後に韓国軍が南北境界地域の河川周辺で集中捜索した結果、約3週間で30個の地雷が回収された。

 韓国軍は2020年12月、地雷を掘り出して除去する特殊戦車を導入。非武装地帯での地雷の除去作業に使用しており、来年までに計80台導入する計画という。

 2018年9月の南北首脳会談では、当時のムン・ジェイン(文在寅)大統領とキム・ジョンウン(金正恩)総書記が軍事分野の合意書に署名。翌10月には軍事分野の緊張緩和策の「最初の履行措置」として、南北軍事境界線をまたぐ板門店の共同警備区域(JSA)で、地雷を撤去する作業に着手し、同月中に完了した。

 しかし、南北の関係が悪化している今、このような南北連携による地雷除去作業を難しくもしている。

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