<W解説>韓国・尹錫悦大統領の就任初の国連演説、キーワードは「自由」=北朝鮮への言及はなし(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国・尹錫悦大統領の就任初の国連演説、キーワードは「自由」=北朝鮮への言及はなし(画像提供:wowkorea)
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が20日、米ニューヨークで始まった国連総会で一般討論演説を行った。尹氏は10番目に演台に立ち、「自由」と「連帯」をテーマに約10分間演説。一方、北朝鮮に対するメッセージや、国際社会に対して北朝鮮への制裁を呼び掛けるなどの内容は盛り込まれなかった。

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 尹氏は就任後初めての国連総会演説で、「真の自由と平和は疫病と飢餓からの自由、非識字からの自由、エネルギーと文化の欠乏からの自由を通じて実現できる」とした上で、「自由と平和に対する脅威は、国連と国際社会が蓄積してきた普遍的な国際ルールを強く支持し、連帯することで乗り越えていかなければならない」と訴えた。国際社会における韓国の責任と役割にも言及。「世界市民の自由を守るとともに自由を広げて、平和と繁栄のために国連と共に責任を果たす」と明言した。

 韓国メディアは、今回の尹氏の演説のキーワードは「自由」だったと解説した。「自由と連帯:転換期の解決策の模索」をテーマとした演説原稿には「自由」が21回登場した。尹氏は今年5月の大統領就任演説や、光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)の記念演説でも自由を前面に掲げた演説を行っている。

 一方、北朝鮮に関しては一度も言及しなかった。韓国メディアのヘラルド経済は「世界で唯一の分断国家である韓国大統領の国連総会演説は、朝鮮半島の平和の重要性を喚起し、対北政策を直接説明することで国際社会の支持を求める機会であることから、北朝鮮への強硬姿勢を示してきた尹大統領が北朝鮮に関する発言をしなかったことは異例だ」と指摘した。大統領室の高官は、今回の演説で北朝鮮に触れなかったことについて「(光復節の演説で提案した)『大胆な構想』にこれ以上つけ加えることも、取り除くこともない状況だからだ」と説明した。

 「大胆な構想」とは、北朝鮮に対し、核開発をやめれば食料を送ったり、韓国の支援で発電所や病院などを造ったりできるとする提案だ。尹氏は光復節の演説で、「北朝鮮の核兵器プログラムは、わが国のみならず北東アジアの安全保障にとって脅威だが、これを平和的に解決できるよう対話の扉は開いている」とし、「北朝鮮が実質的な非核化プロセスに着手すれば、国際社会と協力し、北朝鮮の経済強化や生活向上につながる大胆な計画を提供する用意がある」と述べ、途絶えている非核化交渉の再開に意欲を見せた。しかし、北朝鮮は演説の2日後に中西部・ピョンアンナムド(平安南道)付近からファンヘ(黄海)に向け、巡航ミサイル2発を発射。さらにこの2日後、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の妹のヨジョン(与正)氏が談話を発表し、「大胆な構想」について「実現とはかけ離れた愚かさの極致」と批判。「『北が非核化措置を取れば』という仮定そのものが間違った前提」と指摘し、拒否する考えを明らかにした。

 尹氏は今回の国連演説で「力による現状変更や、核兵器をはじめ大量破壊兵器、人権の集団蹂躙(じゅうりん)で再び世界市民の自由と平和が脅かされている」とした上で、「解決策を模索する出発点は、我々がこれまで普遍的に受け入れ蓄積してきた国際ルール体系と国連システムを尊重し、連帯することだ」と述べた。大統領室の高官は、この内容が「尹大統領の北朝鮮に対する間接的なメッセージだ」と説明した。

 しかし、今回の演説について統一部(部は省に相当)のチョン・セヒョン元長官は、全体的にあいまいで修辞的な表現が多いとし「大統領室の演説秘書官がどんな人物なのか知りたい。大統領に国際社会でこんなにも恥をかかせるのか」とし、「おそらく北朝鮮は痛くもかゆくもなく、何を言っているのかもわからないだろう」と批判した。

 ムン・ジェイン(文在寅)前大統領が2018年の国連演説で演説した際は北朝鮮の代表部2人が出席し、演説後に拍手を送る場面が見られたが、今回、尹氏の演説の際、北朝鮮代表部の姿はなかった。

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