<W解説>2018年9月に南北で締結した軍事合意、北朝鮮の暴走で破棄となるのか?(画像提供:wowkorea)
<W解説>2018年9月に南北で締結した軍事合意、北朝鮮の暴走で破棄となるのか?(画像提供:wowkorea)
北朝鮮がこのところミサイル発射を繰り返し、今後、2017年9月以来となる7回目の核実験に踏み切る可能性も高まっている中、韓国の政界では、仮に核実験が強行された場合、2018年に南北で交わした軍事合意を破棄すべきとの声が高まっている。韓国大統領室は14日、「合意が維持されるか破棄されるかは北の態度にかかっている」との見解を示した。

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 「9.19南北軍事合意」と呼ばれるこの合意は、2018年9月、当時のムン・ジェイン(文在寅)大統領が北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記と南北首脳会談を行った際、文政権が北朝鮮との間で締結した。南北が軍事的緊張緩和のために努力することを申し合わせる内容で、南北は地上、海上、空中で一切の敵対行為をやめ、非武装地帯(DMZ)を平和地帯に変えるための対策を講じることとした。具体的には、軍事境界線上空への飛行禁止区域の設定、DMZ内にある監視所の撤収、黄海の北方限界線(NLL)付近の「平和水域」への転換と範囲の設定、板門店の共同警備区域(JSA)内での観光客の自由往来などが盛り込まれた。

 当初は合意に盛り込まれた事項のうち、DMZ内の監視所(GP)の試験的撤去や、南北を流れるハンガン(漢江)河口で共同調査、朝鮮戦争で亡くなった兵士らの遺骨の発掘作業などが履行された。しかし、2019年にベトナム・ハノイで開かれた米朝首脳会談が物別れに終わったことで南北関係は再び冷え込み、合意の履行はストップ。専門家からは、合意締結後に南北境界地域での偶発的な衝突の可能性が著しく低下する効果があったとの声もあるが、一度は試験的に撤去されたGPが再び設置されるなど、合意の意義は色あせたとの批判が強い。

 しかし、文前大統領は先月、南北軍事合意の締結から4年になるのに合わせ開かれた、記念討論会に寄せた書面による祝辞を公開した。その中で文氏は、南北軍事合意について「対立・敵対の歴史を終わらせるという意思を込め、『戦争のない朝鮮半島の始まり』を内外に示した。軍事的リスクを画期的に低くする実践的措置に合意した」と振り返り、「特に朝鮮半島を『核兵器と核脅威のない平和の地』とする意思を内外に明確に示したことは非常に大きな意味を持つ」と強調した。

 しかし、北朝鮮がこのところミサイル発射を繰り返したり、軍用機10機あまりを南下させ、軍事境界線付近の飛行禁止区域に接近させるなど、挑発行為を続けていることを受け、与党からは前政権の北朝鮮政策を批判する声が上がっている。与党「国民の力」の首席報道官はこのほど論評を発表。「南北軍事合意を踏みにじった」とし「北と『共に民主党』の偽装平和ショーに全国民が騙された」と痛烈に批判した。その上で「(前政権は)対北政策の失敗を認めるべきだ」とし、「北が7回目の核実験を強行した場合、朝鮮半島非核化宣言と南北軍事合意維持の是非を真剣に考えなければならない」と主張した。

 北朝鮮は14日午前1時ごろから約2時間にわたって、ファンヘ(黄海)と朝鮮半島東の日本海に向け、計170発の砲兵射撃を行った。着弾地点が南北軍事合意に基づいて設定された海上緩衝区域内だったため、韓国当局は明白な軍事合意違反だと判断している。

 韓国軍合同参謀本部は同日、「北が墳自合意に違反し挑発を重ねて朝鮮半島に軍事的緊張をもたらしていることに対し、厳重に警告するとともに、即刻中止を強く求める」とする声明を発表した。また、国防部(部は省に相当)は同日、合意の順守と再発防止を促す将官級軍事会談首席代表名義の文書を、軍の通信回線を通じて北朝鮮に送った。

 一方、現政権に批判的なハンギョレ新聞は13日付の社説で「与党関係者が軍事合意の破棄について云々しているのは、安保危機を国内政治の危機の打開策として利用するためではとの疑いが持たれても当然」と政権の姿勢を疑問視した。

 ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は14日、北朝鮮の砲兵射撃について「軍事合意違反だ」とした。だが、今のところ、軍事合意を破棄するかについては明言していない。

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