<W解説>韓国検察が前政権時代の事件の捜査を加速=野党は「政治報復だ」と反発(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国検察が前政権時代の事件の捜査を加速=野党は「政治報復だ」と反発(画像提供:wowkorea)
韓国の検察は22日、ムン・ジェイン(文在寅)前政権下で起きた韓国人の公務員が北朝鮮に射殺された事件に絡み、当時の国防部(部は省に相当)長官だったソ・ウク(徐旭)氏と、海洋警察庁長だったキム・ホンヒ(金洪熙)氏を職権乱用や虚偽公文書作成などの疑いで逮捕した。文前政権は南北融和を進めていたことから、検察は徐氏と大統領府の国家安全保障室が当時共謀し、北朝鮮に配慮し、事件の矮小(わいしょう)化を図った疑いがあるとみて調べている。ユン・ソギョル(尹錫悦)政権発足後、文前政権の高官が逮捕されるのは初めて。韓国紙のハンギョレ新聞は、「検察は文政権の中心的な安全保障関係者への捜査を本格化させるものとみられる」と伝えている。

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2020年9月、黄海上で、漁業指導船に乗り込んでいた海洋水産部の男性公務員が行方不明となった。その後、北朝鮮側の海域を漂流しているところを北朝鮮軍に発見されるも、北朝鮮軍は男性を射殺し、遺体を焼却した。

しかし、この事件に対する北朝鮮側の対応は早く、韓国が事実関係を公表した翌日の9月25日、朝鮮労働党統一戦線部名義で殺害を認める通知文を韓国側に送付。通知文には「予想外の恥ずべきことがわれわれの海域で起きたことについて、南側(韓国)に申し訳ない気持ちを伝える。わが指導部は、こうした遺憾な事件によって、これまで積み上げてきた北南間の信頼と尊重の関係が崩れることのないよう、必要な安全対策を講じる」と謝罪の言葉が記されていた。また、「われわれの海域で予想外の恥ずべきことが起き、ムン・ジェイン(文在寅)大統領と南の同胞を大きく失望させたことに対し、非常に申し訳なく思う」とするキム・ジョンウン(金正恩)総書記の言葉も含まれていた。

事件を受けて、韓国海洋警察は当時、男性が3億ウォン(現在のレートで約3080万円)を超える借金を抱えていたことにより、「現実逃避の目的で自ら越北した」とする見解を発表した。これには「韓国政府が対北関係への悪影響を考慮して真実を隠ぺいしているのではないか」との見方も出ていた。

政権が変わり、海洋警察は今年6月、「殺害された公務員が越北したとみられる証拠は発見できなかった」とし、文前政権時に下した見解を覆した。国防省も「これまで、殺害された公務員が越北した可能性があるとの推測に基づいた情報を発表し、国民に大きな混乱をもたらした。内容をもう一度検討・分析した結果、亡くなった公務員の越北を立証できなかった」と説明した。

韓国の検察は、男性が自ら北朝鮮に渡ったとする政府の判断と食い違う内容の情報などを収めた軍事機密を、当時、国防部長官だった徐氏が情報処理システムから削除したり、軍合同参謀本部の報告書に虚偽の内容を記載するよう指示していた疑いが強まったなどとして、22日、徐氏を職権乱用などの疑いで逮捕した。また、事件の経緯を捜査した、当時の海洋警察庁のトップ、金氏も逮捕した。2人はいずれも容疑を否認している。

当時、北朝鮮との関係悪化を懸念した文前政権が組織的な隠ぺいを図った可能性があり、聯合ニュースは「2人の逮捕により、同事件に関連した前政権の安保担当高官らに対する捜査にも弾みがつきそうだ」と伝えている。今後当時の大統領府のソ・フン(徐薫)国家安保室長や、パク・チウォン(朴智元)国家情報院長にも捜査が及ぶ可能性があり、ハンギョレ新聞は「文前大統領の捜査に乗り出す可能性も排除できない」と報じた。

検察は、文政権時代に起きた政治がらみの事件をめぐり、捜査を加速化させている。徐氏と金氏が逮捕された22日、韓国の検察は、今年3月の大統領選挙で尹大統領に僅差で敗れた最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表の最側近を逮捕した。逮捕された「共に民主党」系のシンクタンクの副院長を務めるキム・ヨン(金湧)容疑者は、李代表がソウル近郊のソンナム(城南)市長だった当時、都市開発に関わった民間業者から昨年8億6000万円(約8800万円)の違法な支持資金を受け取ったとして、政治資金法違反の疑いが持たれている。

野党は一連の検察による捜査について「政治報復だ」と批判を強めている。また、ソウル市民からも「過去への回帰という感じがぬぐえない」との声も出ている。それぞれの事件について、今後の捜査の行方が注目される。

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