<W解説>南北経済協力事業は事実上破綻、北朝鮮の景勝地、金剛山で韓国側施設が北により一方的解体(画像提供:wowkorea)
<W解説>南北経済協力事業は事実上破綻、北朝鮮の景勝地、金剛山で韓国側施設が北により一方的解体(画像提供:wowkorea)
かつて韓国と北朝鮮の経済協力の一環として観光事業が進められていた北朝鮮南東部の景勝地、クムガンサン(金剛山)地区で、北朝鮮による韓国側の施設の一方的な撤去が相次いでいる。米政府系メディアのボイス・オブ・アメリカ(VOA)が今月18日に報じたところによると、金剛山観光地区にあった韓国側資産の飲食店が撤去された様子が衛星写真で捉えられた。韓国のハン・ドクス首相は先月、「韓国の財産の一方的な破棄に対しては、適切な時期に厳重に問いたださなければならない」と述べた。

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 金剛山観光事業は、南北経済協力の一環で、1998年、南北対話を重視した金大中(キム・デジュン)政権下でスタートした。北朝鮮出身で「ヒュンダイ(現代)」財閥の創業者、故チョン・ジュヨン(鄭周永)氏が率いる現代グループの「現代アサン(峨山)」が開発を手掛けた。同事業は南北融和の象徴とされたが、2008年7月、金剛山を訪れた韓国人女性観光客が北朝鮮兵によって射殺される事件が発生。これを契機に金剛山観光事業は中断した。2018年に金総書記と当時のムン・ジェイン(文在寅)大統領が金剛山地域への観光客受け入れを再開することで合意したが、実現しないまま現在に至る。

 それどころか、同地区の韓国側の施設を北朝鮮が一方的に撤去する動きがみられる。今年3月には、現代峨山が所有する「ヘグムガン(海金剛)ホテル」、4月には韓国のリゾート運営会社「アナンティ」のゴルフリゾートが撤去された。今年7~8月にかけては、同地区にあった「金剛山文化会館」、「オンジョンガク(温井閣)」東館と西館などの金剛山観光施設や、南北離散家族の面会所などが解体された。金剛山文化会館は南北の文化交流の拠点とも言える施設で、かつては南北の歌手による交歓公演のほか、韓国の文化に触れることが難しい北朝鮮では異例の、韓国人歌手による単独公演も開かれた。温井閣は金剛山観光の出発地になっていた施設で、食堂や土産物店などが入っていた。

 北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記は、2019年10月に金剛山を視察した際、観光地区の韓国側施設について「見るだけで気分が悪くなる。みすぼらしい南側の施設を全て撤去すべき」と指示を出した。これを受けて北朝鮮は海金剛ホテルの解体に着手する動きを見せたが、新型コロナウイルスの流行を理由に2020年1月、解体作業を延期することを韓国側に伝えていた。しかし、今年に入って韓国側に通達なしに解体作業が再開されていたことになる。韓国統一部は当時、強い遺憾の意を示し、北朝鮮側に撤去作業の状況を通知するよう要請。しかし、北朝鮮側から回答はなかった。

 そして先月には、現代峨山が所有する刺身料理店が撤去されていたことがVOAの報道により明らかになった。VOAによると、米国の民間衛星サービス会社が8月28日に撮影した衛星写真では、この飲食店の建物の屋根をはっきり識別できるが、9月17日には建物はなく、白いコンクリートだけが捉えられた。この店は2003年12月に開業。北朝鮮の貿易会社が供給する魚介を刺身にして金剛山観光客に提供していた。

 韓国統一部(部は省に相当)の当局者は「韓国側の度々の警告にもかかわらず、北がわれわれの財産権に対し、違法な侵害を続けていることを政府は遺憾に思う」とした上で、「北による韓国側資産の撤去行為は南北合意の明白な違反。北はこうした一方的な行動を即刻中断しなければならず、これに関連した責任は全面的に北にある」と警告した。

 また、金剛山観光事業など、南北経済協力事業に投資した韓国企業の関係者は、韓国政府と国会に対し、これまでの事業への投資金を全額補償することなどを求めている。複数の南北経済協力の関連団体は今月18日に共同記者会見を開き、国会で南北経済協力被害補償法を制定するよう訴えた。朝鮮半島交易投資連合会のチョン・テウォン幹事は会見後、「われわれは慈善家ではなくビジネスマンだ。経済的ビジョンを見据え、政府の約束を信じて対北事業に参加した」とし、事業が事実上、破綻した今、政府の措置で被害を被ったのだからその責任を取ってほしいと求めた。

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