【ソウル聯合ニュース】北朝鮮の金正恩(
キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長は24日、韓国と米国が独自の北朝鮮制裁を検討していることを非難する談話を発表し、韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を乱暴な表現でなじった。尹政権に対する反対運動をそそのかしたり韓国国内の分裂をあおったりするような発言も重ねた。 金与正氏は「(韓国の)国民は尹錫悦のばかがしきりに危うい状況をつくっている『政権』をなぜただ見ているだけなのか分からない」と批判した。韓国の国民に反政権運動をあおるような発言で、一種の内政干渉に当たる極めて不適切な試みだ。南北関係が一般的な外交関係とは異なる特殊性を帯びているとしても、国内政治への介入はタブーといえる。 同氏は「それでも文在寅(ムン・ジェイン)の時は少なくともソウルがわれわれの標的ではなかった」と、前政権と比較しながら尹政権を非難した。韓国の革新派と保守派の対立構造を利用して国内の反目を助長させる意図が感じられる。 韓国・北韓大学院大の梁茂進(ヤン・ムジン)総長は「前大統領と現大統領を名指しした非難と比較により、間接的に韓国社会の分裂を誘導しようとするもの」との見解を示した。 金与正氏は談話の多くを、韓国に対する激しい口調の非難に割いた。韓国を米国の「忠犬」「手下」、また「米国が投げてくれる骨をしゃぶりながらうろつく野良犬にすぎない」などと見下し、尹大統領と韓国政府に「大ばか」「薄のろ」「厚かましく愚鈍」などの表現を使い、こきおろした。 韓国に対する露骨な威嚇もあった。「(前政権期には)ソウルがわれわれの標的ではなかった」との発言は、裏返せば「今はソウルが標的」となる。「標的」に関しソウルに言及した点で、1994年の南北実務接触で北朝鮮の朴英洙(パク・ヨンス)代表が発した「ソウル火の海」を連想させるとの指摘もある。 北朝鮮は韓米合同訓練に強く反発し、ひとしきり挑発を繰り返してきた。今回、まだ決定もしていない独自制裁を問題視して金与正氏が暴言を重ねたことから、北朝鮮が制裁を口実に、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を通常通りの角度で発射したり7回目の核実験を実施したりするなど強力な追加挑発に踏み切るのではないかと懸念する声も上がる。 金与正氏は19年2月にベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が物別れに終わった後、荒い表現の談話を発表するようになった。昨年半ば以降は節度ある表現を使うことも多かったが、今年5月に尹政権が発足すると再び激しい言葉に転じた。8月には「尹錫悦という人間自体が嫌だ」とした。 韓国政府系シンクタンクの統一研究院のホン・ミン北韓研究室長は「金与正氏がまたも感情的な談話に転じたのは状況が思うような方向に進んでいない傍証で、韓国に報復で対応するという態度を示すもの」と分析した。
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