3月に行われた大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験の様子=(朝鮮中央通信=聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫
3月に行われた大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験の様子=(朝鮮中央通信=聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫
【ソウル聯合ニュース】2022年は、北朝鮮が韓国に対する核先制攻撃の脅威をむき出しにするなど、軍事挑発をこれまでにない水準まで引き上げた1年だった。 韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の発足を受けて韓米合同軍事演習が再開されるとともに米戦略資産の展開が頻繁になると、北朝鮮はことあるごとに言いがかりをつけて報復に乗り出し、朝鮮半島情勢は急速に冷え込んだ。 北朝鮮の非核化措置に合わせて経済支援などを行うとした韓国政府の対北非核化ロードマップ「大胆な構想」を「愚かさの極致」とこきおろし、韓米による対話の試みにも一切応じなかった。 北朝鮮は米国と対立する中国・ロシアの黙認を後ろ盾に核・ミサイル能力の高度化を進め、韓米はこれに対抗して拡大抑止の実効性向上に力を入れており、激しい対立は来年も続くと懸念される。◇ICBMだけで8回 弾道ミサイル過去最多の63回発射 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)は年明けから核・大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射のモラトリアム(一時停止)を破ることを示唆し、3月24日にICBMを発射した。 18年4月に北朝鮮が自発的に行った核実験場の閉鎖と核実験・ICBM発射実験の中止から4年4カ月で発射が再開されたことになる。 北朝鮮の脅威は、尹錫悦政権の発足と前後してさらに露骨になった。 正恩氏は4月25日の閲兵式(軍事パレード)で核兵器を「国の根本利益を侵奪する試みに対しても使用する」と述べ、核を防衛用ではなく先制攻撃にも使用する考えを示したのに続き、6月には韓国の東海岸を攻撃目標地点とする作戦地図を公開し、韓国への圧力を強めた。 これにとどまらず、北朝鮮が「戦勝節」とする朝鮮戦争休戦協定締結日の7月27日に行った行事では、先制攻撃など危険な試みに乗り出せば尹政権は「全滅」すると脅した。9月の最高人民会議(国会に相当)では恣意的な判断でいつでも韓国を狙った核先制攻撃を断行できるという内容を盛り込んだ「核武力の法制化」に踏み切った。 北朝鮮は9月末から11月中旬までの間に、米戦略資産の展開や韓米合同演習などを理由に連日にわたり弾道ミサイルやロケット砲を発射するとともに、多くの戦闘機を出撃させて緊張を高めた。 11月2日には1日に25発のミサイルを発射。このうち1発は、南北分断後初めて海上の南北軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)の韓国側に落下した。  北朝鮮が今年行った弾道ミサイルの発射実験は、核能力の高度化と直接的な関連のあるICBMの8回を含め、過去最多の63回に上った。大陸間弾道ミサイル部隊についての言及もあり、ICBMが実戦配備の段階にあることをうかがわせた。 7回目の核実験が行われる可能性も残っている。韓米当局は、北朝鮮が今年5月ごろに北東部・豊渓里の核実験場の復旧を終え、正恩氏さえ決断すればいつでも核実験が可能な状態だとみている。◇韓国政府の非核化ロードマップを拒否 中ロとの蜜月続く 韓米は北朝鮮の挑発や合同演習の再開、戦略資産の展開、独自の対北朝鮮制裁などで対抗しながらも、北朝鮮との対話の扉は開いている。 尹大統領は光復節(日本による植民地支配からの解放記念日、8月15日)の演説で対北朝鮮非核化ロードマップ「大胆な構想」を発表し、北朝鮮の反応を促した。「大胆な構想」は、北朝鮮の非核化措置に合わせて多様な経済協力事業や米朝関係の正常化など大胆な措置を行うとする計画だ。 北朝鮮が真摯(しんし)に非核化交渉に臨むだけでも北朝鮮の鉱物資源と食料を交換するという、「交換プログラム」を推進するとの内容も盛り込まれた。 だが、正恩氏の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長はこれを「愚かさの極致」と拒否し、尹大統領に対して強い口調で非難するなど韓国側との関係改善に全く関心を示さなかった。 北朝鮮はこのように、対話の扉を閉ざしたまま核・ミサイルの高度化に注力する一方、他国に頼らない「自力更生」に集中した。  慢性的な経済難に新型コロナウイルスの流行も重なったが、韓国はおろか国際社会の支援を最後まで受け入れなかった。中国からの食料や肥料、非常医療品の支援も限定的なものだった。 北朝鮮は韓米と対立し、中国・ロシアとの関係を深めている。台湾問題やロシアのウクライナ侵攻などを巡り中ロを公然と支持するなど、米国と対立する両国を後ろ盾にしようとする狙いをあからさまにしている。 一方、北朝鮮は制裁で資金源が断たれると、暗号資産(仮想通貨)窃取など違法なサイバー活動による核・ミサイル開発資金の確保に力を入れている。 韓国・北韓大学院大の梁茂進(ヤン・ムジン)総長は、「今年は朝鮮半島でさまざまな情勢の変化や転換点があり、南北間、朝米(米朝)間の対立・対決の構図が続いて朝鮮半島の緊張が高まった」として、「南北、朝米間の不信の溝が深いうえ、実質的に敵対関係が続いており、局面を転換するのは容易ではないだろう」との見方を示した。
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