キム・ジョンウン の最新ニュースまとめ
◇ソウルと仁川港の写真 韓国専門家は懐疑的
北朝鮮の朝鮮中央通信が公開した写真は白黒で、ソウル市内を東西に流れる漢江と橋、仁川港が写っている。拡大すると、ソウル・竜山の大統領室庁舎一帯もぼんやりと見える。
中央通信は国家宇宙開発局の18日の実験で「20メートル分解能試験用の撮影機1台、多(マルチ)スペクトル撮影機2台、映像送信機と各帯域の送受信機、操縦装置と蓄電池などを設置した衛星試験品」が打ち上げられたとし、これらの設備を使って写真を撮影したことをほのめかした。
だが韓国の専門家は懐疑的な見方を示している。張泳根(チャン・ヨングン)韓国航空大教授(航空宇宙学)は、北朝鮮が衛星を打ち上げ、韓国をこの程度撮影したものを見せるのは初めてで、北朝鮮にとって進歩だとした。ただ「近ごろの偵察衛星は分解能(対象を識別する能力)が0.5メートルは必要で、大学でも分解能が1メートルの衛星をつくる。北が言う20メートルの分解能では軍事衛星や偵察衛星と呼べるレベルではない」と指摘した。
21世紀軍事研究所のリュ・ソンヨプ専門委員も「撮影ができなかった可能性があり、(北朝鮮メディアが公開した写真は)いつどこで撮影したか分からず、実際の写真と信じることはできない。欺くための活動の可能性もある」と述べた。
写真の真偽は別にし、写真の公開自体は北朝鮮の情報力を誇示することが目的とみられている。韓国政府系シンクタンク、統一研究院の洪ミン(ホン・ミン)北韓研究室長は「お前たちにだけ衛星があるのでない。自分たちもお前たちを見下ろすことができるという一種のからかい」と分析した。韓国・北韓大学院大の梁茂進(ヤン・ムジン)総長は「今回の発射が弾道ミサイルでなく偵察衛星であることを強調する意図と思われる」とし、「偵察衛星の開発を終えれば韓国の主要地域を全て把握できると予告するもの」と見なした。
米国の偵察衛星は地上にある車両のナンバープレートまで識別できるほど高解像度の画像情報を生産できるとされる。韓米の情報当局は北朝鮮北東部・豊渓里の核実験場にどれくらい土が盛られているか、坑道に出入りする人がいるか、平壌郊外の美林飛行場に軍装備が集まっているかなど、北朝鮮の動向を細かく把握している。これを認識している北朝鮮が、自分たちにも韓国を監視する「目」があるとアピールするため、粗悪な画像ながら写真の公開に踏み切ったのではないかとの指摘だ。
◇北朝鮮版「3軸体系」の構築か
韓国が北朝鮮の核・ミサイル対応を目的とする「韓国型3軸体系」を強化しているように、北朝鮮が戦術核、戦略核、偵察衛星による「北朝鮮版3軸体系」の構築を進めるとの分析もある。短距離弾道ミサイルに搭載する戦術核、中・長距離弾道ミサイルと大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載する戦略核に加え、韓国の主要施設を偵察する軍事衛星を備え、有事には打撃を与えようとするもの。
北朝鮮は2月27日と3月5日にICBMの「火星17」を発射した際、偵察衛星の発射実験だと主張した。高度は620キロ、560キロだった。今回の実験の高度も500キロと近いが、発射に使ったのは準中距離弾道ミサイル「ノドン」の胴体に似ている。
北朝鮮は昨年1月の朝鮮労働党第8回党大会で「軍事偵察衛星の運営」を課題に挙げた。国家宇宙開発局は今回、偵察衛星を開発するための「最終段階の重要な実験」を行ったとし、開発が大詰めにあることを示唆した。
統一研究院の洪室長は「一連の実験を経て、第8回党大会で予告した偵察衛星開発課題の下敷きとなる技術的な準備を終えたと宣言したことになる」と述べた。また、北朝鮮の偵察衛星開発は韓国の偵察衛星開発に刺激を受けた可能性があるとした。韓国は今年3月、国内技術で開発した固体燃料ロケットの初の打ち上げ実験に成功し、このロケットを使った独自の偵察衛星開発にも拍車をかけている。
洪氏は「北は戦術核、戦略核、偵察衛星という『北版3軸体系』を完成させ、ミサイル体系で目の役割をする偵察衛星を確保することで、自分たちだけの運用体系を持つという意志をあらわにしている」との見方を示した。
北朝鮮メディアはこの日、国家宇宙開発局が「2023年4月までに軍事偵察衛星1号機の準備を終える」と発表したと伝えた。北韓大学院大の梁総長は「偵察衛星は弾道ミサイルと外観が違うだけで、発射技術は同じだ」と述べ、「開発を完了した偵察衛星を来年4月のいくつかの記念日などに合わせて打ち上げ、金正恩(キム・ジョンウン)氏の業績として宣伝する可能性がある」と指摘した。
来年4月11日は金正恩国務委員長(党総書記)が党第1書記就任に就いてから11年、同13日は国防委員会第1委員長就任11年となるほか、4月15日は故金日成(キム・イルソン)主席の誕生日で、これらが打ち上げのタイミングとして考えられる。
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