今年11月3日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて開かれた国家安全保障会議(NSC)常任委員会に出席した尹錫悦大統領(大統領室提供)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫
今年11月3日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて開かれた国家安全保障会議(NSC)常任委員会に出席した尹錫悦大統領(大統領室提供)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫
【ソウル聯合ニュース】2023年も南北関係の改善は期待し難く、双方の対峙(たいじ)が続く見通しだ。韓国の専門家らは、北朝鮮が来年も核・ミサイル能力の高度化を図るため強い挑発に打って出ると予測する。北朝鮮の方でも、強硬な対韓国敵視政策を継続する姿勢を鮮明にしている。

キム・ジョンウン の最新ニュースまとめ

 韓国政府は北朝鮮に向け、常に対話のドアは開かれているというシグナルを発し続けているが、韓国が差し出した手を北朝鮮が取る可能性は極めて低いというのが専門家の大方の見方だ。

 ウクライナ戦争や激化する米中の戦略的競争などの国際情勢は北朝鮮に有利に働いており、北朝鮮は「韓米日」対「中ロ朝」の対立構図も利用し、核・ミサイルの高度化を加速させるとともに軍事的緊張を高めるとの見通しが強まっている。

◇23年も挑発継続か 偵察衛星実験や通常角度でのICBM発射も

 北朝鮮は、来年中に軍事偵察衛星の実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の通常角度(30~45度)での発射実験を行う可能性を示唆した。実際にこれらの実験と核実験に踏み切れば、朝鮮半島の危機は最高潮に達する見通しだ。

 北朝鮮の国家宇宙開発局は先ごろ「23年4月までに軍事偵察衛星1号機の準備を終える」と発表した。戦術核、戦略核とともに、いわゆる「北朝鮮版3軸体系」を構成する偵察衛星を来年上半期中に打ち上げる可能性に言及したものだ。

 また、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長は今月20日に朝鮮中央通信を通じて発表した談話で、ICBMの大気圏再突入技術を立証するには高角度でなく通常の角度での発射が必要だとする韓国の専門家の指摘に「じきに見れば分かること」と反論。通常角度での発射実施をほのめかした。

 7回目の核実験を強行する恐れもある。専門家は、北朝鮮は国内外の状況が有利だと判断すればいつでも核実験のボタンを押すはずだと指摘する。連鎖核実験の可能性までも取り沙汰されている。ほかに、北朝鮮による固体燃料エンジンを用いたICBMや原子力潜水艦の開発も予想される。

◇核保有で自信強める北朝鮮 国際情勢も有利と判断

 韓国は来年も、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が掲げた非核化ロードマップ「大胆な構想」に基づき北朝鮮に対話と協力を促していくとみられる。権寧世(クォン・ヨンセ)統一部長官は今月13日の記者会見で、来年の業務推進方向に関し「北が挑発をやめるよう根気よく説得し、南北当局間の接触を始められるようにする」と語った。

 だが専門家らは、北朝鮮が韓国の対話・協力提案に応じる可能性は低いとみている。核兵器保有国として自信を持っていることに加え、現在の国際情勢も自らに有利と判断しているためだ。

 金正恩氏は9月に行った施政演説で「現国際情勢は米国が提唱する一極世界から多極世界への転換が加速している」とし、こうした情勢を「軍事力をより早く飛躍させられる立派な条件と環境」だと評価した。

 北朝鮮問題を巡る米中の態度も、南北関係の膠着(こうちゃく)が続く要因に挙げられる。米国は韓国と同様、北朝鮮に対話再開を促す一方、対話を再開しただけではいかなる見返りも与えないとの姿勢を貫いている。中国は、米国が軍事的緊張を高めていることが朝鮮半島の安定を損なう原因だと主張し、対話を通じた問題解決という原則的な立場ばかりを繰り返している。

 国家安保戦略研究院のチェ・ヨンファン責任研究委員は「こうした北の情勢判断と朝鮮半島を取り巻く国際秩序が変わらない限り、23年に南北関係が急激に変化する契機はあまり訪れないだろう」と見込んでいる。

◇24年の米大統領選まで緊張継続か 専門家「危機管理に努めるべき」

 専門家の間では、朝鮮半島の緊張局面が来年どころか24年11月に予定される米大統領選まで続くとの観測もある。北朝鮮が米国の次期大統領選を見据え、その時までにできる限り核・ミサイル能力を強化して米次期政権との交渉力を引き上げようとするとの見方だ。

 統一研究院のチョン・ソンユン研究委員は、北朝鮮が当面、核能力の高度化に注力すると見込み、「24年半ばまでに朝鮮半島の安全保障の危機指数が最高に達する可能性が高い」と予想した。

 統一研究院は23年の朝鮮半島情勢について「南北間で『強対強』の対峙局面が続き、軍事的緊張が高まる状況が繰り返し発生する」と予測し、来年3月までと見込まれる北朝鮮軍の冬季訓練、来年7~9月の北朝鮮軍の夏季訓練、これと重なる韓米合同軍事訓練の時期に軍事的緊張の高まりが予想されるとした。

 一方で、南北の対峙が続く中でも情勢の変化によっては対話の糸口が見えるとの観測もある。バイデン米政権が任期後半に外交で業績を残すため積極的な対北朝鮮政策に転じる可能性が指摘されるほか、北朝鮮にとっての戦略上の環境が悪化する場合も緊張緩和の動きが期待できるとの声も出ている。

 統一研究院の金常基(キム・サンギ)統一政策研究室長は「来年の南北関係の見通しは非常に暗いが、危機管理と緊張緩和に向けた手立てを探るべきだ。対話に向けた努力がいつにも増して必要になるだろう」と助言している。


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