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「ニュース工場」は、韓国のラジオ放送局のTBS(旧交通放送)で2016年9月から放送が始まり、司会の金氏による刺激的で扇動的な発言により、従来にはない時事番組として人気番組となった。しかし、その発言をめぐって偏向的だと度々批判を招いてきた。先の大統領選では、一昨年10月、動画投稿サイト「ユーチューブ」で、現・野党「共に民主党」の候補だったイ・ジェミョン(李在明)氏の名を挙げ、「李在明は一人でここまで来た人物だ。今こそ、あなたたちがちょっと助けてやるべきだ」と発言。番組で李氏の支持を呼び掛けた。
これに、韓国の選挙放送審議委員会は昨年3月、大統領選挙期間中に特定候補の支持を表明した司会者にラジオ番組の進行を任せたとして、韓国・TBSに対し、法定制裁の「警告」を議決した。
また、一昨年11月には日本で新型コロナウイルスの感染者が急減したことに「日本は韓国の診断キットを輸入していないほぼ唯一の国。日本にある診断キットでは検査してもデルタ株を感知しない」などと発言した。
ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領や妻のキム・ゴンヒ(金建希)氏に対しても度々批判してきた。昨年5月、尹大統領と金夫人が大統領執務室などで過ごす様子を撮影した写真が金夫人のファンクラブを通じて公開され、物議を醸した際には「大統領執務室に夫人が行って写真を撮るのは公私の区別ができていない。写真がファンクラブを通じて公開されるということは、大統領秘書室が機能していないということだ」と懸念を示した。
金氏は南東部キョンサンナムド(慶尚南道)チネ市(現・チャンウォン市チネ区)出身の54歳。1998年にインターネットメディアの「タンジ日報」を開設し、ネットにおける政治論客として名をはせた。タンジ日報は大手メディアの問題点を指摘して注目を集め、資産価値は一時、800億ウォン(約75億円)にまで達した。「ニュース工場」の司会は番組開始の2016年9月から務めている。
「ニュース工場」や金氏に対し「偏向的だ」と批判があった一方、時事週刊誌「時事IN」が昨年実施した「2022年大韓民国信頼度調査」では、「信頼できる番組」1位に選ばれた。公共放送KBSの「ニュース9」や、SBSの「それが知りたい」をも上回る信頼度を獲得した。また、「一番信頼できるジャーナリスト」を問う質問で金氏は2位にランクインした。
こうした中、金氏は先月12日の放送内で、年内いっぱいで番組の司会を降板し、番組自体も終了することを明らかにした。番組を放送する韓国・TBSはソウル市から資金援助を受けている放送局で、同市議会は今年の市の予算案で、TBSに対する支援額を昨年より27.4%、88億ウォン(約9億円)減の232億ウォン(約23億9000万円)とすることを決めた。支援額が大幅減となり、TBSは制作費の削減に着手。「外部の司会者を招く制作費がない」(TBSのユ・ソンヨン理事長)として金氏の降板が決まり、併せて「ニュース工場」の終了も決定した。
「ニュース工場」は先月30日、最後の放送となり、金氏は「再び戻ってくる」などと話した。また、自身の発言が度々物議を醸し、「政治的に偏向している」と批判されてきたことについては「私は偏向的だ。偏向に至る過程は公正だ」とした。一方、金氏は番組降板に伴い、ユーチューブのチャンネル「金於俊の謙遜はつらい ニュース工場」を開設した。金氏は「『ニュース工場』がなくなるわけではないことを示すために、スタジオも(従来のものと)同じように作った」などと話した。金氏のもとには「ニュース工場、万歳」などとチャンネル登録者から歓迎する声が寄せられている。チャンネルでの番組放送開始は今月9日の予定という。
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