<W解説>脱北者による北朝鮮へのビラ散布、今は法令違反でも今後罪に問われない可能性も?(画像提供:wowkorea)
<W解説>脱北者による北朝鮮へのビラ散布、今は法令違反でも今後罪に問われない可能性も?(画像提供:wowkorea)
韓国の統一部は10日、ドローンを使って南北軍事境界線の北側に向けてビラを散布すると予告した脱北者団体に対し、自粛するよう要請したことを明らかにした。南北関係発展に関する法律では、北朝鮮に向けてビラを散布した場合、3年以下の懲役または3000万ウォン(約310万円)以下の罰金を科すことを定めている。しかし、政府は先月の北朝鮮による領空侵犯行為を受け、同様のことが再び行われた場合、2018年の南北軍事合意の効力を停止する可能性があるとしている。韓国政府は、軍事合意の効力が停止した場合に、ビラ散布が法的に可能になるかどうか精査している。

キム・ジョンウン の最新ニュースまとめ

脱北者団体「自由北韓運動連合」は今月9日、北朝鮮位向け近くドローンを用いてビラを散布する予定だと明らかにした。先月末に北朝鮮無人機による領空侵犯が発生したことを受けてのことだという。

同団体はこれまで度々大型風船を使って北朝鮮に向けビラなどの散布を行ってきた。昨年10月にも、政府の自粛要請を無視する形で新型コロナウイルスの医薬品などを大型風船で飛ばした。この際、韓国の経済・社会・文化の発展を収録した小冊子や米国の上下院が北朝鮮の人権状況を伝えるために作製した動画入りのUSBなども入れた。北朝鮮住民に人権状況や外部の実情を知らせるためだ。

一方、北朝鮮はビラが配布される度に強い怒りを示してきた。キム・ジョンウン(金正恩)総書記の妹のキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党副部長は、昨年8月に北朝鮮で開かれた朝鮮労働党の党会議で、北朝鮮における新型コロナウイルスの感染源は韓国から風船で飛来した宣伝ビラだと主張。ビラ散布を続ければ「われわれはウイルスはもちろん、南朝鮮(韓国)当局の連中も撲滅することで応えるであろう」と威嚇した。

韓国統一部は敏感な南北関係などを考慮し、これまで、脱北者団体に対しビラ配布をやめるよう要請し続けている。昨年5月、同団体にビラなどの散布を控えるよう遠回しに求め、7月には当局者の発言として公に自制を促した。しかし、その一方で昨年11月に統一部のクォン・ヨンセ長官は「対北朝鮮ビラ禁止法(南北関係発展に関する法律改正案)は違憲」とする意見書を憲法裁判所に提出した。当時、統一部側は「ビラなど散布行為を法律で規制することは表現の自由などの観点から望ましくないという趣旨だ」と説明した。その上で、「ビラなどの散布に政府が賛成するという意味ではない」と強調した。

元日からミサイルを発射するなど、北朝鮮が挑発行為を続ける中、「自由北韓運動連合」はビラ散布を計画中であると、韓国メディアに明らかにした。同団体のパク・サンハク(朴相学)代表は韓国・聯合ニュースの取材に、冬場は北から吹く風の影響で大型風船によるビラ配布が難しいため、動力装置のあるドローンを用いて北朝鮮の奥地まで散布する計画だと説明した。これに、統一部は「政府は現行法に基づき、敏感な南北関係の状況、国民の生命と安全のため、不要な危険をもたらす可能性のあるビラ散布行為を自粛する必要があると考える」と明らかにした。統一部は既に同団体の朴代表に政府の立場を伝えたという。

一方、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は今月4日、北朝鮮の無人機が先月、韓国の領空に侵入したことを受けて、北朝鮮が再び韓国の領土を侵犯した場合、南北軍事合意の効力停止を検討するよう国防部(部は省に相当)長官らに指示した。「9.19南北軍事合意」と呼ばれるこの合意は、2018年9月、当時のムン・ジェイン(文在寅)大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記が署名した「平壌共同宣言」の付属合意書だ。南北が軍事的緊張緩和のために努力することを申し合わせる内容で、南北は地上、海上、空中で一切の敵対行為をやめ、非武装地帯(DMZ)を平和地帯に変えるための対策を講じることとした。

この軍事合意の効力が停止した場合、脱北者団体が南北軍事境界線付近で北朝鮮向けビラを散布しても、政府は処罰しない方針という。

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