北朝鮮で17日、国会に相当する最高人民会議が開かれる。韓国の聯合ニュースは「今年も核武力を強化する方針を表明した中、キム・ジョンウン(金正恩)国務委員長(朝鮮労働党総書記)が出席して施政演説を行うかどうか注目される」と伝えている。

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最高人民会議は国の予算や法律の改正、国家機関の人事などを決定するため、年に1、2回開かれている。直近では昨年9月に開催され、この時には核兵器の使用条件などを定めた法令を採択したことが日本や韓国でも報じられた。金総書記は施政演説し、米国は究極的には北朝鮮の体制崩壊を狙っていると主張。「絶対に核を放棄できない」と述べ、非核化交渉を拒否する姿勢を鮮明にした。

北朝鮮の国営メディア、朝鮮中央通信は先月初め、最高人民会議が今月17日に開催されると報じた。会議では昨年の内閣の事業総括と今年の国の課題、国家予算などが議題になるといい、核・ミサイル開発を含めた軍事分野でどのような方針を打ち出すのかが焦点となる。

韓国政府は、とりわけ金総書記が出席するか否かを注視している。金総書記は代議員(国会議員に相当)ではないが、2019年から最高人民会議に出席している。金総書記はかねてから、今年が建国から75年、戦勝記念日と位置付ける朝鮮戦争の休戦協定の締結から70年となることから「歴史的な年だ」と強調している。昨年9月の最高人民会議に続いて今回も出席し、演説することになれば、核武力の強化だけでなく、対韓・対外メッセージを出す可能性が高いとみられる。韓国統一部も金総書記が施政演説を行う可能性について注視している。同部のイ・ヒョジョン副報道官は13日の記者会見で、金総書記が施政演説を行う可能性について「関連動向について注意深く見守りたい」と述べた。

一方、聯合ニュースは「今回の最高人民会議が昨年末の党中央委員会総会で決まった事項を承認する意味合いが大きい上、来月8日に朝鮮人民軍創建75年の大型イベントを控えているため、金氏が出席しない可能性もある」と伝えている。

また、今回の最高人民会議では「平壌文化語保護法」の採択についても討議するとされ、これについても注目される。北朝鮮では近年、韓国ドラマをひそかに見る住民が増加しており、当局が目を光らせている。ドラマなど、韓国の文化コンテンツに触れた若者などの間で韓国風の話し言葉が流行しており、当局は体制維持にも影響が出かねないとこの風潮を懸念しているものとみられる。

北朝鮮には韓国ドラマの流布に対して死刑を含む厳罰を定めた「反動思想文化排撃法」が存在する。2020年末に制定された。北朝鮮当局は、非合法に流入する韓流コンテンツを「人民の精神をむしばむ社会主義の敵」とみなしており、同法は韓国文化の流入を厳しく取り締まることを主たる目的としている。

内容はかなり過激なものとなっている。同法27条では「南朝鮮(韓国)の映画、録画物、編集物、図書、歌、図画、写真などを直接見たり聞いたり保管した者は5年以上15年以下の労働教化刑(懲役刑)を宣告され、コンテンツを流入させ流布した者は、無期労働教化刑(無期懲役刑)や死刑など最高刑に処す」と定めている。また、重罰の対象は韓国の文化コンテンツにとどまらない。28条では米国や日本のコンテンツについても規定している。28条は「米国や日本など、敵対国の文化や共和国(北朝鮮)に反対する内容が含まれる編集物を見たり、流入させたりした者は、10年以下の労働教化刑に処する。多量のコンテンツを流入させた場合には死刑に処する」と規定している。

2021年には北東部のリャンガンド(両江道)で、韓国映画を見ていた中学生が同法に基づき14年の労働教化刑(懲役刑)に処された。昨年10月には中朝国境の都市、ヘサン(惠山)で、韓国ドラマなどを友人へ回し見させた高校生2人が公開処刑されたという。

17日の最高人民会議で採択を討議するとみられる「平壌文化語保護法」を制定して言葉をも取り締まり、統制の一層の厳格化を図ろうとしているものと思われる。

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