昨年7月に死去した安倍晋三元首相の生前のインタビューを収録した「安倍晋三回顧録」(中央公論新社)が8日、発売された。回顧録には日韓関係やムン・ジェイン(文在寅)前大統領についての言及もあり、安倍氏は日韓関係が破綻した責任は文政権にあるなどと主張している。

キム・ジョンウン の最新ニュースまとめ

「安倍晋三回顧録」では歴代最長の7年9か月間に及んだ政権運営や外交の舞台裏などについてつづられている。読売新聞の特別編集委員と論説副委員長が聞き手を務めた。インタビューは安倍元首相が退任してから1か月後の2020年10月から約1年間、計18回36時間にわたって行われた。

当初、昨年初めに刊行予定だったが、安倍氏からの要請で発売が延期となった。その後安倍氏が昨年7月の銃撃事件で死去したため、昭恵夫人の同意を得て出版されることとなった。

回顧録で安倍氏は日韓最大の懸案である元徴用工訴訟に言及。元徴用工訴訟では、韓国の大法院(最高裁判所)が2018年10月、日本製鉄に対し、原告の元徴用工に対して賠償を命じた。同年11、12月には三菱重工業などに対し、勤労挺身隊に動員されて被害を受けたと主張する原告の韓国人への賠償を命じた。

この判決を機に日韓関係は戦後最悪と言われるまでに悪化したが、安倍氏は回顧録で「(文政権は元徴用工訴訟問題に関連して)韓国大法院の判断が国際法違反だということを知りながらも、『反日』を政権浮揚の材料として使おうと考えたのだろう」と指摘。「文在寅大統領は確信犯だった」とした。当時の文大統領が、ノ・ムヒョン(盧武鉉)政権時代に「元徴用工への賠償は1965年の日韓請求権協定に含まれる」と判断したことを知りながらも、2018年の判決後、何ら対策を立てなかったとの指摘だ。

その後、安倍政権は2019年7月、韓国向け半導体素材3品目の輸出管理厳格化を発動し、同年8月、貿易上の優遇措置を適用する「グループA」から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。元徴用工問題をめぐり、文政権が具体的な対応を示さないことへの事実上の対抗措置だった。

安倍氏は回顧録で当時のこの措置についても語った。判決の後、何も解決策を示さない文政権に対応する過程で措置に踏み切ったと説明し、「二つの問題(元徴用工問題と韓国政府の安全保障上の貿易管理体制に不備があるとされる問題)が連結されているかのようにして、韓国が徴用問題を深刻に受け止めるようにした」と語った。また、直後に文政権がこれに対抗してGSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)の破棄に乗り出したことについては「感情的な対抗措置で、米国の強い圧迫を招いた」と批判した。

さらに安倍氏は慰安婦問題についても言及。この問題をめぐっては、2015年12月、岸田文雄外相(現・首相)と韓国外交部(外務省に相当)のユン・ビョンセ長官(当時)との間で日韓慰安婦合意がなされた。合意では、慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と表明。韓国政府が元慰安婦を支援するために設立する財団「和解・癒し財団」に日本政府が10億円を拠出し、両国が協力していくことなどを確認した。翌2016年、元慰安婦らの支援事業を担う「和解・癒やし財団」が発足したほか、日本政府は合意に基づき10億円を拠出した。しかし、合意の無効化などを公約に掲げた文氏が2017年5月に大統領に就任し、韓国政府は2018年11月、財団の解散決定を発表し、合意は事実上、白紙化した。

合意について安倍氏は「韓国が裏切って失敗し、国際社会で日本が道徳的優位に立つことになった」と語った。

回顧録ではそのほかトランプ前米大統領やプーチン露大統領、中国の習近平国家主席ら首脳も数多く登場する。安倍氏はトランプ氏と北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記が2018年に行った米朝首脳会談について、当時、日本政府がこれに反対したことを明かした。安倍氏は、米国の軍事的圧力が北朝鮮に効果があると考え、制裁を維持すべきとの立場だったが、トランプ氏が考えを変えなかったと振り返った。

Copyrights(C)wowkorea.jp 3