<W解説>厳重に管理される韓国の「大統領指定記録物」とは?(画像提供:wowkorea)
<W解説>厳重に管理される韓国の「大統領指定記録物」とは?(画像提供:wowkorea)
ノ・ムヒョン(盧武鉉)元大統領などの「大統領指定記録物」約9万8000件の保護期間が今月25日に満了した。記録物は保護期間満了後、秘密記録物と一般記録物に区分される。一般記録物については今後、大統領記録管理専門委員会の審査を経て、公開の有無が決定する。

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 大統領記録物とは、大統領が保護期間を15年の範囲内(私生活に関しては30年以内)と定めた大統領に関する記録物を指す。「公共機関の記録物管理に関する法律」(1998年12月制定、記録物管理法)は、大統領記録物について「大統領とその補佐機関において職務遂行に関連して作成された全ての記録物」と定めている。記録物は行政安全部(部は省に相当)傘下の大統領記録館が厳重に管理している。保護期間中には閲覧などが厳しく制限され、記録館の職員であっても、館長の承認を得た上で、状態の検査や点数確認など最小限の業務のみが可能となっている。

 韓国の大統領記録物の管理と大統領記録館設立についての議論は、記録物管理法によるキム・デジュン(金大中)大統領の記録物の移管、金大統領図書館の設立などによって、学界や市民団体の関心が高まる中で展開された。韓国の大統領記録物は、政権樹立以後の激動の政治史の中で、隠匿、破棄、流出によって万全な管理がなされなかった時代があったが、同法の制定とともに政府と学会の問題提起と政策樹立によって管理体制が確立されていった。

 大統領記録館には歴代の大統領の重要な文書や写真のほか、時の政権における様々な資料が保管されているため、政治絡みの事件が起きた際、同館にはこれまでしばしば検察の家宅捜索が入ってきた。

 2020年9月に朝鮮半島西のソヘ(西海)で韓国の海洋水産部の公務員の男性が漁業指導船に乗船中に行方不明となり、その後、北朝鮮軍によって射殺された事件をめぐって、検察は昨年9月に同館を捜索。事件当時のムン・ジェイン(文在寅)政権の高官が、諜報(ちょうほう)に関する報告書や傍受情報を無断で削除し、男性が自らの意思で北朝鮮に渡ろうとした事件にでっち上げるよう指針を出した疑いがあり、検察はこうした疑惑を解明するため家宅捜索で当時の大統領府の文書を入手した。

 また、文前大統領が在任中に北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記から贈られた2匹の犬が法律上、大統領記録物であったことから、文氏の大統領退任に伴い、2匹の引継ぎ問題が浮上したこともあった。豊山犬の雄「ソンガンイ」と雌の「コミ」は、2018年9月の南北首脳会談の際に文氏が金総書記からプレゼントされた。文氏の大統領在任中は大統領府で飼育されてきた。退任後は私邸で飼育を続けた。しかし、法律上、これらの犬は大統領記録物であり、本来は国に返還されなければならない。大統領記録館に移管するのが原則だが、文氏の事務所は、任期の終わりに飼育を文氏に委任する合意書が結ばれたと主張。実際、文氏は任期最終日、大統領記録館の館長との間で犬の管理費について支援を受ける協約を結んでいた。しかし、費用が月250万ウォン(約26万円)に上ることがわかり、新政権から疑問の声が噴出。ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は「たとえ首脳間の贈り物であっても、それまで育てていた主人が引き受けるべきだ」と主張し、結局、文氏が私費を投じて私邸で2匹の飼育を続けた。だが文氏は昨年11月、2匹を国に返還する意向を表明。結局、大統領記録館に返されることになった。法律上は記録物としての扱いだが、生き物のため、貸与という形で光州市のウチ(牛峙)動物園が引き取り、飼育されている。

 今月25日、盧元大統領の記録物、約8万4000件と、それ以前の大統領の約1万4000件の保護期間が満了したが、盧氏の記録物をめぐっては、2007年の南北首脳会談の議事録が記録館の前身、国家記録院に存在しないことが判明。2013年、検察は盧氏が削除を指示していたとの捜査結果を発表し、当時、衝撃が広がった。

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