2019年11月、南北軍事境界線がある板門店で北朝鮮への強制送還を拒んで抵抗する漁民(統一部提供)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫
2019年11月、南北軍事境界線がある板門店で北朝鮮への強制送還を拒んで抵抗する漁民(統一部提供)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫
【ソウル聯合ニュース】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)前政権時代に北朝鮮の漁民の男2人を強制送還した違法な措置に関わったとして同政権の高官らが在宅起訴された事件で、当時の青瓦台(大統領府)と情報機関の国家情報院(国情院)が漁民の乗った漁船を拿捕(だほ)する前から送還を検討していたことが9日、国会を通じて入手した検察の起訴状で明らかになった。検察は、青瓦台と国情院が南北関係の行き詰まりを打開する狙いで強引に送還に動いたとの見方を起訴状に記載した。

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 ソウル中央地検は先月28日、文前政権で政府の要職を務めた鄭義溶(チョン・ウィヨン)元青瓦台国家安保室長、盧英敏(ノ・ヨンミン)元大統領秘書室長、徐薫(ソ・フン)元国情院長、金錬鉄(キム・ヨンチョル)元統一部長官を職権乱用の罪などで在宅起訴した。

 この漁民2人は2019年11月、漁船に乗って南下し、朝鮮半島東の東海上の軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)付近で韓国軍に拿捕(だほ)された。政府は当時、2人が同僚の船員16人を殺害した疑いがあるとの理由で5日後に北朝鮮に強制送還した。

 起訴状によると、青瓦台と国情院は拿捕の前から強制送還の方針を固め、実務者にその指針を伝えて送還を急いだ。

 青瓦台の国家安保室と国情院が同船の拿捕後に漁民を北朝鮮に引き渡すことを協議し始めたのは19年11月1日で、当時は同船が韓国海軍の退去措置に従わずNLLを越えて南下しようとしていたときだった。

 国情院長だった徐氏は同じ日、部下に「同僚の船員を多数殺害した凶悪犯が南に来ようとしている」と話し、漁民を北朝鮮に送還できるかどうか法的な検討を指示した。

 身柄を拘束された漁民が同月3日に同僚の殺害を自白すると、徐氏と国家安保室長だった鄭氏は翌4日に当時の盧秘書室長の主宰で会議を開いて強制送還の可否を決定し、鄭氏がこれを承認する形を取ることを決めた。

 検察は、強制送還の法的な根拠がなく、正当化する根拠もないなかで急いで送還の方針を立てた背景には「政治的意図」があったとみている。

 文政権は当時、ベトナム・ハノイでの米朝首脳会談の決裂で急速に冷え込んだ南北関係を改善しようと多角的な努力を傾けていた。政府は韓国・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長を招待する親書を同月4日に送る予定だったため、漁民の送還を北朝鮮との和解・協力に努力していることを示す機会と見なしたと検察は判断している。

 起訴状には、鄭氏や徐氏が亡命を望む漁民の意思や実務者の意見に反して送還を無理に進めた状況が詳しく記載されている。

 徐氏は同月4日、部下に電話をかけ「16人も殺した男らが亡命したくて来たのだろうか。生き延びるために来たのだろう。北送(北朝鮮へ送還)する方向で報告書を作成してほしい」と述べた。部下が国情院内の反対の声を伝えても、言った通りにするよう指示して聞き入れなかった。 

 事件当時に作成された文書も送還の方針に合わせて修正された。徐氏は報告書から漁民による亡命要請の部分を削除するよう指示したとして、虚偽公文書作成の罪にも問われている。 

 漁民に対する合同調査の結果報告書も亡命に関する内容は全て削除され、亡命の意思がなかったかのように記載された。

 検察は、亡命の意思が明確だったにもかかわらず、強制送還の決定に基づき虚偽の報告書が作成されたと起訴状で指摘している。


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