<W解説>梨泰院事故から間もなく半年=再発防止に向け生かされる日本の取り組み(画像提供:wowkorea)
<W解説>梨泰院事故から間もなく半年=再発防止に向け生かされる日本の取り組み(画像提供:wowkorea)
韓国・ソウルの繁華街、イテウォン(梨泰院)で起きた雑踏事故から間もなく半年となる。今月6日には再発防止に向けた警察による大規模な訓練が実施された。日本の警察を参考にした「DJポリス」も登場した。一方、犠牲者の遺族は5日に追悼集会を開き、独立した調査機構で事故の真相究明を進めるべきだとして特別法の制定を訴えた。

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事故は昨年10月29日、ハロウィーンを前にした週末でごった返す梨泰院の通りで起き、日本人2人を含む159人が死亡した。犠牲者は10代、20代の若者が多かった。

梨泰院はかつて米軍の駐屯地があったことから外国の文化が集まり、その文化に触れることができる場所としても有名だった。動画配信サービスのネットフリックスで配信され、大ヒットした韓国ドラマ「梨泰院クラス」の舞台となった観光名所でもあり、日本人観光客にも人気の街だ。

多くの人でにぎわう場所である一方、路地裏など、狭い道も点在しており、事故が起きた通りも幅3~4メートルほどの細い坂道だった。狭い通りに人があふれる中、一部の人が転倒したのをきっかけに、通りにいた人が次々と折り重なるように倒れる群衆雪崩が起きたとみられている。

この事故では警備体制の甘さや警察や消防の対応の不備が指摘された。新型コロナの行動制限がない中で迎えるハロウィーンということで、多くの人出が予想されていたが、警備に動員された警察官らの人数は不十分で、また、事故発生の数時間前から「人が多すぎて圧死しそうだ」などといった通報が警察や消防などに多数寄せられていたにも関わらず、適切な対応を取らず、これらが事故を招いたとの批判が噴出した。

事故を受けて、警察庁は約500人で構成する特別捜査本部を発足。今年2月、捜査結果を発表し、管轄の自治体や警察、消防など、法令上、安全予防や対応の義務がある機関が事前の安全対策を怠るなど、事故の予防対策を取らなかったために起きた「人災」と結論付けた。

捜査の結果、安全対策や通報への対応が不十分だったなどとして、業務上過失致死傷などの容疑で現地の警察署長ら6人が逮捕、17人が書類送検された。一方、行政安全部(部は省に相当)のイ・サンミン(李祥敏)長官やソウル市のオ・セフン(呉世勲)市長、警察トップのユン・ヒグン(尹熙根)警察庁長らは人出の危険性に対する具体的な注意義務があったわけではないとして、「嫌疑なし」とされた。事故の捜査は捜査結果の発表を持って終結したが、捜査が未だ不十分だと訴える遺族は多い。

先月には、業務上過失致死傷などの罪に問われた警察署長と地元区長の初公判が開かれ、2人は「事故を予見できなかった」などとして起訴内容を否認した。

再発防止に向けて、韓国の警察は今月6日、多くの人出を誘導する訓練を行った。訓練には歩行者役を含む約600人の警察官が参加し、徐々に増加する人出を誘導する手順を確認した。身動きできないほどに歩行者が増えた状況では、機動隊が建物の上からロープやはしごを道路に下ろし、歩行者を引き上げて避難させた。

また、韓国警察庁は雑踏警備に新たに「DJポリス」を導入することを決めた。警察官が車上から人の流れを誘導する「DJポリス」は東京・渋谷のハロウィーンの雑踏警備などで導入されている。この日の訓練でも警察官がスピーカー付きの車両の台に上がって、群衆に向けた呼びかけを実践した。韓国警察庁は、隊員が「DJポリス」として活動できる車両を新たに6台導入する計画。

再発防止に向けた取り組みが進められている中、犠牲者の遺族は5日、追悼集会を開いた。梨泰院遺族協議会と市民対策会議はこの日、共同声明を発表し、「私たちが真実を糾明する。(独立した調査機構で事故の真相究明を進めるための)独立的真相調査特別法を市民の力で成立させる」とし、「国家の不在でこのような惨事が二度と起きないように、真実が究明され、責任を取るべき人が責任を取る日まで、共に行動してくださることを切に願っている」と呼び掛けた。

先月には、兵庫県明石市で2001年に起きた歩道橋事故の遺族2人が訪韓し、梨泰院事故の遺族と会った。2人は慰労の言葉をかけ、真相究明に協力していきたいと伝えた。日本での遺族らの活動も紹介し「僕らにできることがあれば支援、意見交換したい。今回がスタートだ」と呼び掛けた。

二度と起きてはならない事故の防止に、日本の取り組みが生かされるといい。

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