キム・ジョンウン の最新ニュースまとめ
金剛山観光事業は、南北経済協力の一環で、1998年、南北対話を重視した金大中(キム・デジュン)政権下でスタートした。北朝鮮出身で現代財閥の創業者、故チョン・ジュヨン(鄭周永)氏が率いる現代グループの現代峨山が開発を手掛けた。同事業は南北融和の象徴とされたが、2008年7月、金剛山を訪れた韓国人女性観光客が北朝鮮兵によって射殺される事件が発生。これがきっかけで金剛山観光事業は中断した。2018年にキム・ジョンウン(金正恩)総書記と当時のムン・ジェイン(文在寅)大統領が金剛山地域への観光客受け入れを再開することで合意したが、実現しないまま現在に至る。
それどころか、同地区の韓国側の施設を北朝鮮が一方的に撤去する動きがみられる。海金剛ホテルは、2000年10月、オーストラリアの実業家が金剛山観光地区に建設して開館した海上浮遊式のホテル。その後、韓国の現代峨山(ヒョンデ・アサン)が買収した。金剛山を訪れた観光客の宿泊施設としてだけでなく、南北離散家族再会の会場としても活用され、南北交流を象徴する施設となってきた。
しかし、2008年7月、金剛山を訪れた韓国人女性観光客が北朝鮮兵によって射殺される事件が発生。これを契機に金剛山観光事業が中断し、同ホテルも10年以上にわたって放置された。北朝鮮の朝鮮労働党の幹部向けに営業されていたとの見方もある。
2019年10月、金剛山を視察した金総書記は同ホテルについて「見るだけで気分が悪くなる。みすぼらしい南側の施設を全て撤去すべき」と指示を出した。その後、北朝鮮は解体に着手する動きを見せたが、新型コロナウイルスの流行を理由に2020年1月、解体作業を延期することを韓国側に伝えた。しかし、昨年3月、北朝鮮は解体作業を開始した。ボイス・オブ・アメリカは当時、解体作業がかなり進行していることを伝えた。VOAは衛星写真サービス企業が撮影した写真を分析。「ホテルの屋上の部分が穴が開いたように全体的に黒く見える。ホテルの前には建設車両などが集まっている様子がうかがえ、解体作業の真っただ中にあることを示している」などと報じていた。
韓国政府は南北の協議を経ずに韓国側が所有する建物を一方的に解体しようとしていることを問題視。作業が進むごとに「強い遺憾」を表明してきたが、北朝鮮側がこれに回答することは一度もなかった。
ホテルは下層支持台だけを残し、昨年末に北朝鮮のトンチョン(通川)港に移されていたが、ボイス・オブ・アメリカは今月4日、下層支持台があった通川港を撮影した3日の衛星写真を基に、下層支持台まで解体されたと報じた。今年に入ってから支持台の大きさは徐々に小さくなっていた。解体作業が終わったのは先月下旬とみられる。
金剛山地区では、北朝鮮が同ホテルのほかにもこれまでに金剛山文化会館やオンジョンガク(温井閣)など、韓国側の施設を一方的に撤去してきた。金剛山文化会館は南北の文化交流の拠点だった施設で、かつては南北の歌手による交歓公演のほか、韓国の文化に触れることが難しい北朝鮮では異例の、韓国人歌手による単独公演も開かれた。温井閣は金剛山観光の出発地になっていた施設で、食堂や土産物店などが入っていた。
韓国の公共放送、KBSの報道によると、これまで金剛山観光地区に投じられた投資額は民間が総額4200億ウォン(約428億1300万円)、韓国政府が600億ウォンに上っている。韓国政府は、北朝鮮の一方的な韓国側施設の撤去に対して法的対応を検討しているが、東亜日報は「政府が国内の裁判所に損害賠償請求訴訟を提起して勝訴しても強制執行する方法はなく、制裁の実効性はないと指摘されている」と伝えた。
金剛山観光事業に投じた莫大な資産が泡と消えた現況に、むなしさだけが残る。
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