<W解説>韓国の新しい統一相は「対北朝鮮強硬派」?=尹錫悦政権の狙いとは?(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国の新しい統一相は「対北朝鮮強硬派」?=尹錫悦政権の狙いとは?(画像提供:wowkorea)
韓国大統領室は先月29日、北朝鮮との関係を担う行政機関、統一部(部は省に相当)の高官を交代する人事を発表した。統一相には北朝鮮に厳しい姿勢を示してきたソンシン(誠信)女子大学政治外交学科のキム・ヨンホ教授(63)を指名し、統一部次官には外交部(外務省に相当)出身のムン・スンヒョン駐タイ大使(58)を起用した。25年ぶりに統一相と次官をいずれも外部の人物が務めることになった。ユン・ソギョル(尹錫悦)現政権は対北政策で圧力路線を取っており、今回の人事は、北朝鮮への圧力に重きを置いたものだとの指摘が出ている。

キム・ジョンウン の最新ニュースまとめ

統一部は、朝鮮半島の南北統一や、韓国と北朝鮮との政治的対話、交流、協力、人道支援に関する政策の樹立、統一教育、広報、そのほか統一に関する事務を担う国家行政機関だ。

聯合ニュースによると、統一相に指名されたキム氏は、1980年代後半までは社会科学専門出版社の代表として旧ソ連の共産主義哲学書などを出版した左派系の知識人だった。87年には「不穏な本を出版した」として国家保安法違反の罪で10か月間服役したこともある。米国に留学後、民間のシンクタンク、セジョン(世宗)研究所の常任客員研究委員などを経て、99年に誠信女子大政治外交学科の教授に就任した。聯合によると、その後、キム氏は2005年に保守系の団体で活動するなど政治的スタンスに変化がみられるようになった。11年には保守系のイ・ミョンバク(李明博)政権で統一秘書官に起用され、12~13年に外交部の人権大使を務めた。18年から動画投稿サイト「ユーチューブ」で、対北朝鮮や南北地横溢政策、外交・安全保障、国際政治などの問題について意見を発信している。

キム氏は29日に記者会見し「原則をもって北の核問題を解決するとともに、南北関係改善に向けた基盤を構築するため最善の努力をしたい」と述べた。キム氏は国会の人事聴聞会を経て正式に就任する。キム氏は30日、人事聴聞会の準備室が設けられたソウル市内の南北会談本部を訪れた際、記者団の取材に応じ、「統一部の役割は変化がなければならない」として「統一部は今後、原則のある非常に価値志向の方向で政策を推進していかなければならない」と強調した。

韓国紙のハンギョレ新聞は今月2日付の社説で、キム氏について、メディアへの寄稿やユーチューブ通じて「キム・ジョンウン(金正恩)政権打倒」を主張してきた人物だと紹介。「南北関係にとどまらず、物事を偏狭な極右的視点で裁断してきた。統一部長官はもちろん、高位の公職を担うには不適切な人物だ」と批判した。

また、韓国メディアのイーデイリーは「『対北朝鮮強硬派』に挙げられるキム氏は、人権問題を活用して北朝鮮を圧迫すべきとの主張を提起してきた人物だ」とし、北朝鮮との対話と協力を主導する統一部のトップにキム氏が就任することは不適切だとの意見も出ていることを伝えた。

一方、尹大統領は2日、統一部の役割について「これまで対北支援部のような役割をしてきたが、そのままではいけない」と述べ、変化の必要性について言及。「今後、統一部は自由民主主義的な基本秩序に立脚した統一という憲法の精神にのっとり、統一部本来の役割を遂行すべきだ」とし、「われわれが目指すべき統一は、南北のすべての住民の暮らしが良くなる統一、より人間らしく生きることができる統一でなければならない」と述べた。

尹大統領は人権問題で北朝鮮に圧力を強める姿勢を鮮明にしており、統一部は今年3月、人権報告書を初めて一般に公開した。報告書は「公権力による恣意(しい)的な生命はく奪が行われている」と指摘しており、北朝鮮における深刻な人権侵害の状況が改めて浮き彫りとなった。尹大統領はこれに先立ち、「北の住民に対する人権蹂躙(じゅうりん)は、国際社会に明らかにされるべきだ」と述べ、報告書を公開する意義を強調していた。

今回の人事は、北朝鮮への圧力を強める尹政権の路線に沿ったものであると言えるが、ハンギョレ新聞は「尹大統領が統一部の機能と性格を大々的に変え、事実上『北朝鮮人権部』に変えるというシグナルとみられる」と伝えた。

Copyrights(C)wowkorea.jp 3