【ソウル聯合ニュース】北朝鮮が米国を威嚇する談話に続いて12日、弾道ミサイルを発射し、米国との対決姿勢を強めている。朝鮮半島への米戦略資産(兵器)展開をけん制しつつ、北朝鮮が「戦勝節」とする7月27日の朝鮮戦争休戦協定締結日まで朝鮮半島の緊張を高め続ける可能性がある。 韓国軍合同参謀本部によると、北朝鮮は12日午前10時ごろ、平壌付近から朝鮮半島東の東海上に向け大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる長距離ミサイル1発を発射した。 北朝鮮はこれまで、連日のようにミサイル発射を繰り返したこともあったが、最近は何かしらのきっかけをとらえ、武力誇示に乗り出すパターンを見せている。 今回発射したミサイルがICBMだとすれば、固体燃料式のICBM「火星18」を発射した4月13日以来、約3カ月ぶりとなる。前回は固体燃料式ICBMの開発という軍事的な目的の他に、戦略爆撃機、原子力空母といった米戦略資産が朝鮮半島に展開されたことに反発する意味合いがあったといえる。直近の6月15日の弾道ミサイル発射も、韓米両軍が韓国で実施していた「連合・合同火力撃滅訓練」に反発した武力誇示とみられていた。 今回は米本土を射程に収めるICBMの力を誇示することで、米偵察機の飛行に対する不満を行動として示す意図がありそうだ。 北朝鮮は今月10日から11日にかけ、米偵察機の飛行を非難する談話を出していた。10日朝の国防省報道官談話は「米空軍の戦略偵察機が東海上で撃墜される衝撃的な事件が起きないという保証はどこにもない」と威嚇。金正恩(
キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長は10日夜に続き11日朝の談話で、米偵察機が東海の北朝鮮の排他的経済水域(EEZ)上空を侵犯したと主張し、無断侵犯が繰り返される場合には「米軍が非常に危うい飛行を経験することになるだろう」と軍事行動をほのめかした。 今回のICBMとみられる弾道ミサイル発射も米国に向けた警告のメッセージと受け止められる。ただ、与正氏が侵犯を問題視したEEZ上空は一般的に飛行の自由が認められている。北朝鮮がこうした国際法を認識していないはずはなく、米偵察機の活動への不満というよりは、これを口実に朝鮮半島の緊張を高める狙いがありそうだ。北朝鮮の「戦勝節」の7月27日が過ぎるまで、こうした緊張状態を維持する公算が大きい。 北朝鮮では大規模な閲兵式(軍事パレード)の準備とみられる動きがとらえられている。「戦勝節」に合わせた開催が予想される閲兵式と対米挑発を並行し、北朝鮮内部の結束と住民団結の強化を図ると同時に、米国にメッセージを送り続ける考えとみられる。 韓米が両国首脳の4月のワシントン宣言発表以降、核兵器を搭載できる戦略原子力潜水艦をはじめとする米戦略資産の朝鮮半島展開に向けて動いていることに対する反発も含まれているようだ。ワシントン宣言は北朝鮮の核・ミサイル挑発に対し拡大抑止の強化を図る内容だが、北朝鮮は逆にこれを挑発の原因に挙げ、韓米に責任転嫁するとも考えられる。 北朝鮮の今回の挑発について、韓国・統一研究院の洪珉(ホン・ミン)北朝鮮研究室長は「米国への対抗心とICBMという対応手段の存在を示す内部向けの用途として活用が可能」と分析した。「戦勝節」に限らず、今年後半に予定された米戦略資産展開や韓米合同訓練への対抗心と反発を示す意味合いも強いと述べた。 韓国・北韓大学院大の梁茂進(ヤン・ムジン)総長は「弾道ミサイル発射は戦略原子力潜水艦の朝鮮半島寄港に対する警告の性格が強い」とし、「朝鮮半島の軍事的な主導権は北にあることを示そうとするもの」との見解を述べた。 また北朝鮮が、14日にインドネシア・ジャカルタで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)を意識したとの見方もある。ARFは北朝鮮が地域で唯一参加する多国間枠組みだ。韓国や米国、日本などはこの席で北朝鮮の挑発を非難し国際社会の対応を促す見通しだが、北朝鮮は米偵察機の活動などを取り上げ、高まる緊張の責任を米国に押し付ける可能性が高い。近ごろの韓米日と中ロ朝の対立の様相を際立たせる思惑もあると指摘される。
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