<W解説>北朝鮮のハッカー集団が友好国・ロシアのミサイル企業に侵入?その目的とは?(画像提供:wowkorea)
<W解説>北朝鮮のハッカー集団が友好国・ロシアのミサイル企業に侵入?その目的とは?(画像提供:wowkorea)
ロイター通信などによると、北朝鮮のハッカー集団が、少なくとも5か月間にわたってロシアのミサイル会社のコンピューターネットワークに不正に侵入していたことがわかった。北朝鮮にとってロシアは友好国だが、重要な技術を入手するためにはこうした関係性をも厭(いと)わない姿勢が明らかになった。

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ロイターによると、北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」などは、ロケット設計企業「NPOマシノストロイェニア」のシステムに「バックドア」と呼ばれる侵入路を密かにインストールしていた。ハッカーがデータを持ち出したかどうかや、どのような情報が閲覧されたかは不明という。ロイターは「ネットワークへの侵入の数か月後に北朝鮮は弾道ミサイルの開発に関する進展を公表したが、これがハッキングと関連があるかは明らかではない」と伝えた。

「ラザルス」は複数のハッカーで構成されたサイバー犯罪グループで、北朝鮮人民軍偵察総局の傘下にあるとされる。2014年には米国の「ソニー・ピクチャーズ エンターテインメント」にサイバー攻撃を行った。当時、北朝鮮の最高指導者の暗殺をテーマとしたコメディー映画が制作され、ラザルスによるサイバー攻撃は、配給元だった同社への報復が目的とみられている。映画は同年12月に世界各国で公開予定だったが、北朝鮮の対外宣伝サイト「わが民族同士」は当時、「完全なる現実の歪曲とおかしな想像でつくられた謀略映画の上映は、尊厳高いわが共和国に対する極悪な挑発行為であり、正義の人民に対する耐え難い冒涜(ぼうとく)」と非難。制作側に対し「われわれの断固たる懲罰を受ける必要がある」と警告した。「ラザルス」のサイバー攻撃により、「ソニー・ピクチャーズ エンターテインメント」の機密情報が漏洩する事態となり、作品は米国の一部の映画館のみの公開となった。

また「ラザルス」は、2016年にはバングラデシュの中央銀行のコンピューターシステムに侵入し、8100万ドルを不正送金したとされる。

このほか、米司法省は2017年に世界中で猛威を振るった身代金要求型のコンピューターウイルス「ワナクライ」にも「ラザルス」が関与しているとみている。

北朝鮮では核・ミサイルの開発費をサイバー攻撃によって稼いでいるとも指摘されており、韓国の警察庁傘下の研究所で、長年北朝鮮のサイバー攻撃を調査してきたユ・ドンヨル氏は、NHKの報道番組「クローズアップ現代」の取材に、北朝鮮のハッカーはキム・ジョンウン(金正恩)総書記直属の組織「偵察総局」に所属していると指摘した。ユ氏によると、大学に進学し、際立った成績を修めたエリートたちがハッカー養成組織に入学。その後、20年以上かけてハッカーとして養成されるという。

米国のIT企業が主催し、今年5月に開かれたハッキング大会では、北朝鮮の大学生が1位から4位までを独占した。ハッキング能力を高めた学生たちが、今後、国家のサイバー犯罪に関与することも予想され、懸念が高まっている。

ロイター通信によると、「ラザルス」などが今回サイバー攻撃したロシアの「NPOマシノストロイェニア」は極超音速ミサイル、人工衛星技術、次世代弾道壁のパイオニア的存在。北朝鮮はこれらの分野に高い関心を寄せている。前述のように、「ラザルス」などは同社のシステムに侵入し、情報を抜き取りやすくする「バックドア」を組み込んでいた。ロイターが入手した内部データによると、システムへの侵入は2021年後半ごろに始まり、ITエンジニアがハッカーの活動を検知した昨年5月ごろまで続いたという。

ロイターによると、専門家は北朝鮮のハッカーが「NPOマシノストロイェニア」のミサイルなどに関する情報を入手しても、直ちにミサイル生産能力の向上に活用できるとは限らないと指摘している。

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