韓国警察庁
韓国警察庁
通り魔事件が相次いで発生した韓国で、再発防止のため、今年廃止されたばかりの義務警察制度は再導入される見通しとなった。ハン・ドクス首相が23日、警察の組織再編を発表する中で、義務警察制度の再導入を検討中であることを明らかにした。

義務警察制度は、長年、兵役の軍務の代わりとなる制度として定着してきた。韓国では成人男子に約2年間の兵役が義務付けられているが、義務警察の任務に就くことで兵役義務を果たしたことと同等に扱われる。

母体は、北朝鮮のスパイ摘発やデモの警備を目的として1971年に作られた戦闘警察。その後、82年に義務警察が誕生し、これまで約40年にわたり、人員不足に悩む地方警察を主に補助してきた。

義務警察は警察の一種だが、正式な警察官ではない。「一般義務警察」のほか、大型自動車の運転免許や外国語能力、警察犬ハンドラーなどの技術を生かして任務にあたる「特技を持った義務警察」、「独島(日本名・竹島)の警備隊」の3種類があり、常に志願者が多かった。

試験は、筆記、性格検査、身体・体力検査が行われ、合格すると、現役兵と同様に新兵訓練を受け、その後、任務に必要な技術や法律などを学んだ後、各地の地方警察に配属された。勤務地は訓練での成績や適性によって決められた。

義務警察の主な任務は交通整理や空港などでの治安維持、デモの警備・鎮圧など治安維持業務を補助することで、18か月服務した。学校や地域のコミュニティなどで犯罪防止や交通安全などを呼び掛ける広報団や警察楽団での任務もあり、これらの任務は、兵役対象年齢となった芸能人たちが多く担ってきた。

かつて韓国の軍隊には軍隊内の慰問公演や軍の広報を担う「国防広報員・広報支援隊員」がおり、俳優やアーティストなどの著名人が「芸能兵」として担う「芸能兵制度」があった。しかし2011年、ある議員の調査で、ほとんどの芸能兵が、一般兵に比べ約3倍も多く休暇を取っていたことが明らかになり、厳格な軍隊生活において「芸能人だから」との理由で特別扱いされている実態に、国民からの批判が高まった。

その後、芸能兵が服務期間中に歓楽街で飲酒を伴う食事をするなど、不祥事も発生し、13年に芸能兵制度は廃止となった。

廃止後、芸能人たちの受け皿となってきたのが義務警察制度の「特技を持った義務警察」の枠だった。アイドルグループ「東方神起」のチャンミンや、「SUPER JUNIOR」のシウォンら、数多くの芸能人が義務警察で服務した。

義務警察は週2日休暇が与えられたほか、2か月に1回、3泊4日の外泊も認められるなど、一般兵に比べ自由度が高いため、選抜試験の倍率は毎回高かった。

しかし、ムン・ジェイン(文在寅)前政権が、軍の兵力不足などを理由に義務警察制度を廃止する方針を示した。2018年から段階的に定員を減らし、今年4月に完全に廃止された。

韓国では先月21日、ソウルの地下鉄シンリム(新林)駅近くで通り魔事件が発生し、1人が死亡、3人が負傷した。また今月3日には、韓国・ソウル市郊外のキョンギド(京畿道)ソンナム(城南)市でも通り魔事件があり、1人が死亡、13人が負傷した。比較的、治安が良いとされる韓国で立て続けに通り魔事件が起きたことは国民に衝撃を与え、不安が高まっている。また、事件後から、ネット上に「事件予告」が相次ぐ事態となっている。

こうした中、ハン首相は23日、無差別殺傷事件の再発防止に向けた談話を発表した。ハン首相は「地下鉄の駅やウォーキングコースなど、日常生活の空間で起こる凶悪犯罪は、事実上、テロに等しい」と述べ、警察組織を再編して犯罪防止力を大幅に強化するため「義務警察制の再導入を積極的に検討する」と明らかにした。韓国の公共放送KBSは「導入をめぐっては、現場で治安活動を行う警察の人手不足が背景にあるとみられている」と伝えた。KBSによると、現在警察官は全国に14万人いるが、このうち治安の維持を担う人員は3万人にとどまっている。

韓国警察は相次ぐ無差別殺傷事件や「事件予告」を受け、今月4日から、全国の主な密集地域に機動隊員や装甲車を配置している。ハン首相は「政府は現在、凶悪犯罪に対応するための特別治安活動を強化している。国民の不安が解消されるまでこの活動を継続させる」と話した。

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