劇的な合意により実現したユン・ソギョル(尹錫悦)大統領と共に民主党のイ・ジェミョン(李在明)代表の29日の会談は、埋められない距離をそのまま露出させた。李代表が「国政の舵を切る最後のチャンス」として「国民の言葉に耳を傾けてほしい」と訴えかけたが、李代表の発言内容は議題調整会談で共に民主党が提示した主張と違いがなかった。民間生活回復支援金の支給要求から拒否権行使に対する尹大統領の遺憾表明と今後の国会決定の尊重、チェ上等兵殉職特検法と尹大統領の家族に対する疑惑の整理に至るまで、共に民主党が先立って要求していた内容そのままだった。

会談は2時間10分ほど延長されて行われたが、大統領室がいずれも難色を示したため、妥協点を見出せなかった。医療界と政治間の衝突の解決に向け積極的に協力するという李代表の発言のみが例外だっただけだ。「改革ではなく改悪した」という国会年金改革特別委公論化委員会の案に対して李代表は、所得代替率50%、保険料13%以内に政府が責任意識を持って処理することを要求したことで、年金改革をさらにこじらせる懸念が増大した。2023年の累積赤字が899兆ウォン(約102兆円)に達し、現行方式より実に126兆ウォン(約14兆3000億円)も増えると専門家が推計しているためだ。これは未来の世代が負う借金がほぼ災害クラスになるという計算だ。

会談が何の成果もないまま終わったことは、合意文の作成なしに双方が会談内容を個別に会見したことからも確認できる。大統領室のイ・ドウン報道官は「尹大統領は与野党の合意体が必要だと発言した」と述べ、「今後緊密に話し合いの場を持つことで合意した」と発表したが、その可能性については未知数だ。「民間生活が最も重要な懸案という共通の認識を確認したが、政策的な違いが存在するのも事実」というイ報道官の言葉でも見解の違いは明確だ。共に民主党側は難局を打開する鍵が尹大統領の意志にかかっていると主張することは明らかだが、双方とも責任を免れない。

政界では、今回の会談が閉ざされた対話の扉を開き、政治を軌道修正させる第一歩にすべきだと注文してきた。しかし、圧倒的な議席数に力を借りた野党の独走が予想される現在の状況で、この会談は期待外れに終わった。今後政局はさらに混乱し、政府と与党は窮地に追い込まれる可能性が高まった。国益と未来のための政治の実現のためにも、両者の譲歩と対話が切実になっている。
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