米国の主導で2003年に提唱されたPSIは、国家間協力を通じ核兵器を含む大量破壊兵器や関連物資の積載が疑われる船舶を検査・遮断するというもの。事実上、イラン、シリアと並び北朝鮮が主な対象国となっている。専門家らは、PSIの実質活動以前に、全面参加というだけで北朝鮮の反発を呼び、南北関係の悪化を招きかねないとみている。
まず、PSI全面参加により海上で南北間衝突が発生するのではという問題については、賛否論が交錯している。
政府は「PSIは既存の国内・国際法に基づく国家間協力体のため、韓国が全面参加しても特別に変わるものはない」との立場だ。南北海運合意書と国際法により、韓国側航路帯を航海したり韓国の港に停泊する北朝鮮籍船舶が兵器または兵器の部品を輸送していると疑われる場合、乗船・立入検査を行うことができる。この現行システムはそのまま維持されると、政府は説明する。PSI参加により、公海を往来する北朝鮮船舶を遮断するなどの超法的措置を取ることはないということだ。
一方、PSI全面参加反対論者らは、法的に休戦状態にある朝鮮半島周辺でのPSI関連活動が衝突に結びつく可能性を懸念している。全面参加となれば、韓国政府が問題なしと見ている北朝鮮船舶に対しても、米国など関係国から協力要請があれば立入検査を行わざるを得ない責任が生じるとの指摘だ。また、全面参加により必要な措置を柔軟に取る裁量権が萎縮すれば、朝鮮半島周辺水域で北朝鮮船舶を強制的に停止させ検査する場合に対立が生じかねないとしている。韓国当局の裁量で協力要請を拒むことも可能だが、その場合は「全面参加」の意味は色を失う。
PSI全面参加を留保し続けてきた盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権最後の外相、宋旻淳(ソン・ミンスン)民主党議員は先の国会常任委員会で、PSIに全面参加すれば、関係国間の海上訓練を朝鮮半島周辺で行う道を開くことになり、南北間衝突の火種となるとの懸念を示した。北朝鮮は、3月の韓米合同軍事演習の際、南北間陸路通行の遮断と民間航空機の安全脅威という対応を見せた。現在の南北関係状況で、朝鮮半島周辺水域でPSI訓練が実施されることがあれば、これに北朝鮮が対応措置を取る可能性は排除できない。
朝鮮半島周辺でのPSI関連活動が将来の南北間衝突に結びつくという指摘には相反した意見が存在するが、PSI全面参加自体が短期的に南北関係の緊張を高潮させる可能性については、異論は少ない。
北朝鮮側は、PSIの実体よりも自身を主要ターゲットに想定したPSIへの参加を「対北朝鮮敵対視政策の象徴」としてみる立場だ。3月末に祖国平和統一委員会報道官談話を通じ、韓国政府がPSIに参加すれば宣戦布告と見なし「即時に断固たる対応措置を取ることになると、厳粛に宣布する」と発表している。これが虚言ではないことを行動で示す可能性が、なくはないはずだ。
予想される北朝鮮側の措置としては、まず南北海運合意書の無効化が挙げられる。南北商船は海運合意書により、海路をう回することなく定められたルートに従い南北周辺水域を往来できたが、これが無効化されれば協力は困難になる。軍通信ラインを遮断し、再度、開城工業団地間の通行を中断するとの予想も出ている。一歩進み、黄海上北方限界線(NLL)周辺海域での挑発など、軍事的行動のカードを切ることもあり得る。
北朝鮮のこうした対応が現実のものとなった場合、南北関係はゼロ地点に立ち戻ると予想される。緊張が高まれば、存続の危機にある開城工業団地の前途はさらに不透明になることは間違いないだろう。
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