(手前から)ジェイ、ジョンモ
(手前から)ジェイ、ジョンモ
2004年、シングル『Paradox』でデビューしたビジュアルロックバンド<TRAX(トラックス)>の登場は、当時としては新鮮な試みだった。濃いメイクと奇抜なファッションにヘアスタイル、派手なアクセサリーで飾ったメンバーがヘッドバンギングをし、激しいパフォーマンスを見せていたからだ。海外のビジュアルロックバンドではよく見るスタイルだが、韓国のロック市場では珍しいものだった。また彼らが、アイドルを養成する<SMエンターテインメント>所属という点においても異彩を放っていた。

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そのため<TRAX>は、ビジュアルロックバンドとして歓迎されることが難しかった。彼らは2005から約2年間、日本のインディーズシーンで活動を展開した。日本では5枚のシングルを発表し、クラブなどをまわりながら公演を行っていた。その過程で、4人組で出発したバンドは、ノ・ミヌ(Rose/ドラム)とカン・ジョンウ(Attack/ベース)が脱退し、その後、空白期が長い間続いた。そして、知らずのうちに<TRAX>という名前も忘れ去られていった。

先ごろ、残った2メンバー、ジェイ(ボーカル)とジョンモ(ギター)で再構成された<TRAX>がイメージを変え、最新ミニアルバム『心が冷たい男』でカムバックを果たした。2006年7月の『初雨』以降、約3年半ぶりとなる楽曲だ。ジョンモが作曲しジェイが作詞を手掛けた同曲は、哀切なメロディーのロックバラードだ。声帯ポリープの除去手術を受けたジェイの音色は一層やわらかくなった。

収録曲が大衆的に支持されやすい曲調であることに関し「前作の反省の結果、妥協したものなのか」と問うと、2人は強く否定した。
「過去の僕らは“ハード”なロックを追求していました。練習のレパートリーもメタリカ、リンキン・パーク、リンプ・ビズキットなどの音楽が中心でした。現在はイギリスのブリットポップが好きで、タイトル曲もブリットポップの感じを出しました。ボーカルがやわらかくなったと思います。今回は100%僕らの意見を反映させたアルバムになりました」とジェイ。ジョンモは自身の求めるジャンルを<TRAX>で思う存分、演奏したかったと語る。そのため今作は色も多彩だ。『One Night』では強いギターサウンドを前面に出し、R&B『まだ 私』では、やさしいギター音が引き立っている。

レコーディングなどの作業に36か月間も費やしたおかげなのか、ファンはネット上で彼らの変化に高い支持を示している。ジェイは「デビュー当時はマニアが多く、大衆は僕らの姿に拒否感を感じていました」とし「歌手仲間でさえ“君らはなんだ”という視線を送るほど浮いていたと思います」と笑う。ジョンモは「空白期は愛情を持ってアルバムを作ることができました。意味深い時間でした。僕らはデビューして7年間、多くの会話を交わしてきました」と話した。

7年をともにする2人の音楽的趣向は、初めから同じだったわけではない。
中学生から米国・ロサンゼルスで過ごしたジェイは、ヒップホップに熱中していた。ラジオ番組に出演しラップを披露したこともあったというが、番組関係者が提案した<SMエンターテインメント>の海外オーディションに合格し2000年に韓国へ渡った。「韓国でヒップホップができるものと思っていました。しかし、ロックにラップを取り入れるスタイルだったため、その頃からロックを聴くようになりました。デビューする時には“ロックテイスト”が充満していました」

一方のジョンモは中・高時代からスクールバンドに所属していた。<SMエンターテインメント>の関係者が彼の公演を見てスカウトしたのがきっかけだが、初のオーディションでは不合格だったという。その後、2001年にオーディションに再挑戦し自作曲でアピールした。「ほとんどの練習生がダンスや歌を学ぶなか、僕らはそのような生活は送りませんでした。決められた時間にレッスンを受けるのではなく、それぞれがロックフェスティバルを見に出かけ、メンバーだけでバンドの練習をしていました」

日本のロック市場を経験した<TRAX>は、薄い韓国のロック市場に残念さをあらわにした。
ジェイは「日本はインディーズで実力をつけたバンドがメジャーに進むという段階があります」とし「韓国もインディーズが成長できる機会を増やすべきですね」と語った。ジョンモは「人気よりも、歌の評価が良ければ次のアルバムを出す機会ができる。世界的なバンドの音楽を聴くと次回作が気になるのと同じように、僕らもそんなバンドになりたい」と目標を述べた。


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