チ・ジニは、テレビドラマや映画で意外にコミカルなさまざまなキャラクターを演じてきたが、多くの人が抱くチ・ジニのイメージは、ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」のミン・ジョンホや銀行のコマーシャルで見せる、人当たりがよく信頼を感じさせる姿だ。
しかし、『平行理論』封切りを前にインタビューしたチ・ジニは、口も滑らかで活気に満ち、率直な人物だった。自分で準備したという間食を勧めてくれ、傍らに置かれた彼の大きな革のかばんに視線が行ったのに気付くと、中から筆記道具や手洗いソープ、ビタミン剤、リンゴジュース、手の運動用器具などを取り出してみせた。「とても早口で性格もせっかち」だというチ・ジニ。幅広い作品で活動するにもかかわらずコマーシャルの堅実なイメージが強いことに触れると、先回りして「信頼が感じられるでしょ」と言った。しかし、実際の彼は冷静で客観的な人間だと言い切る。
新作で彼が演じた判事ソクヒョンは、妻が残忍に殺害された後、過去の自分のような人生を歩んだ人物がいるという事実を知り、『平行理論』を信じながらも運命の渦に巻き込まれていく。事件は過去とすれ違い、数多くの人々と絡まり合いながら、反転を繰り返す。
役者は通常、出演作を見る場合、映画全体よりも自分の演技に目が向きがちだが、チ・ジニは自分の映画も客観的に見るという。先ごろ試写会で見たこの作品の感想を聞いた。
「緊張感が良かったですね。見る人が難しいという部分もあったが、もう一度考えれば十分理解できます。もう一度考えて変わってくることもあれば、各自の立場によっても違ってくるでしょう。わたしの芝居については、その時の自分ができるだけのことをしたと思います。もちろん、今やれと言われれば、もっとうまくできるでしょうけど」。
チ・ジニは昨年下半期のテレビドラマ『結婚できない男』で、極度に神経質な草食系男子をコミカルに演じた。一方で映画出演作を見ると、デビューのスリラー作品『H』から、いい加減な講師役で登場したコメディー『女教授』、民主化運動に身を投じ長い年月を刑務所で過ごす男を演じた『なつかしの園』、ハードボイルドアクション『ス SOO』まで、ソフトなイメージは無い。これらの作品をチ・ジニは、一般受けする映画ではなかったが、ジャンルものに飢えている人たちへのプレゼントだと考えている。ヒット作以外は排除される韓国映画において、各自持つ好みというものに対しさまざまな代案を示したものだという。
このほど、大手芸能プロダクション<サイダスHQ>の元本部長が出版した著書の中で、チ・ジニのデビューにまつわる話を明かしている。この元本部長が、広告代理店で働いていたチ・ジニを1年かけて説得してデビューさせた。
デビューの経緯についてチ・ジニは、「関心がなかったのでやらないと言ったんです。俳優は誰でもなれるものではなく、選ばれた人がするものだと思っていたからです。会社で写真を撮り、小物を作る仕事も好きでしたし」と答えた。通貨危機で会社の経営が行き詰まり人員削減が必要な状況となったため、1年だけやって戻ってくるつもりで転身した。
それでも、役者の道を選択したことをただの一度として後悔していない。「仕事のたびにやったことに満足できなければ、一生、一度たりとも満足できないと思います。選択する前は悩んでも 一度選択したことに対しては後悔しません。後悔する瞬間にはやめます」。そうすることが自分にとって幸せだと分かっているからだ。
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