
日本に古くからある食器のひとつに、漆器があります。漆の器というと、高級品だとか、特別な時に用いる食器というイメージがあり、普段使いには向いていないと考える方も多いと思います。ですが実は昔は、漆器のほうが日本の食卓にはポピュラーなものであり、普段使いをするのが当たり前のものでした。漆器の素材の素となるのは木です。日本は豊かな森に囲まれて、木の文化が育ってきました。食器もお箸をはじめ、多くは木がベースになってデザインされているものばかりです。
器になった時、他の陶器や磁器と違っている点に、軽さが挙げられます。そのため、誰でも持ちやすく、持った時にもバランスを保ちやすいのです。また、触った時の感触に温かみがあり、中に熱い汁などが入っていても木が断熱の役割をするので、温かいという程度で済みます。これが、磁器などでできたスープカップの場合はどうでしょう。スープの入ったカップは表面温度が高くなってしまうため、手で包むように持つのはなかなか難しいくらいの熱感があります。熱い汁でも、漆器ならば安全に手に持ってゆっくりと口に運ぶことができるのです。
軽さと熱感の伝わりにくさ、これは木製のカトラリーにとっても優れた特徴となります。まだカトラリーを使うことに慣れていないお子様や、ちょっと力がなくなってきたお年寄りにも、握りやすく使いやすいということから最近注目が集まっているそうです。ステンレスが普通になっているスプーンやレンゲなども、漆器にすると、誰にでも握りやすく口当たりが良くなり、お料理も一味違って食べられるかもしれませんよ。
もし、漆器を手に入れたなら、極度の乾燥状態と直射日光だけは避けるように保管をしてください。漆は紫外線が苦手です。直射日光によって変色してしまう可能性がありますので、ご注意ください。また、天然の木と天然の漆でできているので、呼吸をしています。極度に乾燥してしまうと、ひび割れや剥がれの原因となってしまうので、長く使うためには温湿度がなるべく一定の場所に保管するのが良いでしょう。
当然、食器洗浄機、電子レンジはNGです。洗う時はなるべく中性洗剤で柔らかいスポンジを使うようにしてください。もし欠けてしまっても、直すことができます。購入したお店のアフターフォローを利用したり、作家さんの金継ぎサービスを利用するなど、工夫して長く愛用してあげてください。
独特の色と艶が魅力の漆器、他の国にはない日本ならではの食器の美しさです。製品によっては、お手頃なお値段で手に入れられる漆器もありますから、まずは一つ、汁椀を購入してみてはいかがでしょうか。食卓をいまよりいっそう豊かなものにしてくれるに違いありませんよ。
(C)wowKorea