ヤン・イクチュン の最新ニュースまとめ
映画「息もできない」は、2009年の作品発表時、世界の国際映画祭・映画賞で25以上もの賞に輝き、2010年の日本公開時にも、大きな話題を呼んだ映画である。
特別上映&トークイベントは8月7日~9日の3日間限定で行われ、本作の製作・監督・脚本・編集・主演であるヤン・イクチュンと、毎夜異なるスペシャルゲストを迎えたトークイベントとなっている。第一夜となる7日はヤン・イクチュン監督とともに、「桐島、部活やめるってよ」での俳優デビュー以降、数多くの映画やドラマで活躍する人気俳優、東出昌大が登壇した。
笑顔を浮かべたヤン・イクチュン監督と東出昌大が登場すると観客から大きな拍手で迎えられた。
まずは1人ずつ、「このように見に来てくださってありがとうございます。この映画が日本で公開されたのは2010年になりますので、『息もできない』で観客のみなさんにお会いするのは本当に久しぶりです。これを撮影したのは2007年だったんですけど、10歳年をとりました(笑)」とヤン・イクチュン監督、「素晴らしい映画を観た後なのでみなさん余韻に浸りたいと思うんですけども、僕もヤン監督とお会いできる機会がなかなかないので、今日はいちファンとして色々な話を掘り下げていければと思います」と東出昌大があいさつ。
普段から韓国映画を観ており、「息もできない」が一番好きな韓国映画だという東出昌大は、全シーン、全カットに魅了されたという。そんな東出昌大の言葉にヤン・イクチュン監督は、「本当にありがたいです。この映画のシナリオを書いたのが2006年になるんですけど、シナリオを書き撮影して、自分で演技をして、演出もしたというのが、夢のような気がして現実感がなかったのですが、今日この会場に来て、東出さんと観客のみなさんにお会いしてやっと現実感が湧いてきました」と気持ちを伝えた。
ヤン・イクチュン監督は、東出昌大の俳優デビュー作であり、韓国でも公開されていた映画「桐島、部活やめるってよ」を観たとし、東出昌大の演技について、「何かをあえて表現しようというのではなく、無表情な中にもすごく重みの感じられる、そんな演技が印象的でした」と述べた。
そして「私もあと10cm身長が高ければ、かっこよく東出さんみたいに表現できるんじゃないかなと思います(笑)」と会場を笑わせた。
東出昌大の「息もできない」の脚本はどのように書いたのかという質問に、まず真っ先に書いたのが、蛍光灯を割ったり、自分が助けた女性に唾を吐いたりするオープニングのシーンであり、福岡県のある人口湖のところで浮かんだものだと語った。短編映画の演出をしている友人から出演依頼を受け、福岡に10日ほど滞在した際に、空いた時間で町を歩いていたら、あるおじいさんは釣りをしていて、その側では鶴が飛んでいたりと、非常に平和な光景が見られたが、その中でなぜかあのようなシーンが浮かんだと振り返った。
当時、韓国でインディーズ映画を紹介する番組のアシスタントMCや、演技を教える講師の仕事もしていたが、全てが面倒になってしまって、それをやめる理由として、“シナリオを書くから”というのを挙げたといい、偽りの理由であったものの、実際にやめてみたら、このシナリオが自分の心の中にスッと入ってくるところがあり、オープニングシーンを膨らませ、それから一行書いては時間をあけ、また書いてはと繰り返し、2か月半かけて仕上げたのだと話した。また「幼かった頃は、暴力的な大統領がいた時代であり、当時は暴力によって影響を受けた社会が存在していました。もどかしい状況に囲まれていて、無意識のうちに、それをなんとか解消したいと思っていたが、それがこの作品となって解消することになりました」と自身が見たことや経験した事を書き連ねたのだという。
さらにキャスティングについては、「当時は本当にお金がなかったんです。最初キム・コッピさんの役は、他の女優さんを思い浮かべながらシナリオを書いたんです」と切り出し、その女優で撮影に入ろうとしたが、相手が提示した金額と、自分が用意していた金額に差があり、予算をオーバーするわけにもいかず、以前短編映画で強く印象に残っていたキム・コッピをキャスティングすることにしたのだと、意外な経緯を明かした。
これまでにキャスティングする際には、仕事をしてきた中で出会った人、一緒に作品をしたことがある人、俳優として無名だった頃に出会った人たちなど、身近にいる俳優から探すことが多かったという。
重ねて「演技をしているときも、演出をしているときも、現場でリハーサルをしたり台本の読み合わせをして練習をするというのが、あまり好きではなく、私が好きなのは最初のテイクです」というヤン・イクチュン監督は、「息もできない」を撮影した時は初めは「どういう撮り方をするのか言ってくれないとわからないじゃないか!」と俳優たちから抗議が来たと明かした。そうした撮影方法に苦労する俳優も多いが、東出昌大は共演ができたら「ありがたいです。どんな役でも頑張ることには変わりないので、どんな役でも、機会があればやりたいです!」と意欲を見せ、共演に期待を持たせた。
またヤン・イクチュン監督は、東出昌大との共演について、「もし実現するのであれば、『ロード・オブ・ザ・リング』のような感じで、東出さんをホビット(身長120cm程の種族)にして、私をガンダルフ(魔法使い)にCGでそんな風にして、一緒に出演しできたらいいです(笑)」とユーモアを交えながら、提案した。
最後に東出昌大は「ヤン・イクチュン監督は、韓国での活躍もさることながら、日本と韓国の橋渡しをしてくれる方でもあると思うんです。国境や政治的な問題をまたいで、お互いに手をとり、芸術分野で頑張れるというのは素晴らしいことだと思うし、それを表現できる役者として、映画やドラマを作る側の人間として、尊敬されるような役者になれればなと島国で思う次第です」と、ヤン・イクチュン監督への気持ちと、これからの期待を込めた言葉を残した。
原田眞人監督の「関ヶ原」や、黒沢清監督の「散歩する侵略者」の映画公開を控えており、現在も来年公開予定の濱口竜介監督の「寝ても覚めても」を撮影中だという東出昌大は、「来年楽しみにしててください!」とコメント。
ヤン・イクチュン監督は菅田将暉 とダブル主演を務める最新作「あゝ、荒野」について「去年撮影した映画なのですが、当時は今よりも10kg痩せていたんです。今はお腹が出てしまったんですけど、去年撮影した時には本当に頑張って運動しましたし、ボクシングもしましたし、熾烈な撮影を乗り切りました」と振り返り、「この作品が観客のみなさんにどんな風に伝わってもらえるのか、とても気になっているところです」と気持ちを表した。
東出昌大は「絶対見ます!みなさんも見ましょう!」と声をあげ、あっという間に過ぎた時間に「短かった~」と言葉を漏らした。
フォトセッションでは、ヤン・イクチュン監督が段差に登り東出昌大の肩を組んだり、ハグをしたり、ピースをしたりと、サービス精神旺盛で、お茶目な一面がうかがえた。
『息もできない』新宿ピカデリー9周年記念上映会&トークショーは、第二夜は井浦新(俳優)、ヤン・イクチュン、第三夜、野田洋次郎(RADWIMPS)、松永大司(映画監督)、ヤン・イクチュンが、登壇予定である。
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