韓国映画「人質 韓国トップスター誘拐事件」のキャスト、公開日、あらすじ
ピル・カムソン監督は、韓国・中国合作映画「MUSA-武士」(2001)「アシュラ」(2017)などのキム・ソンス監督の作品や「結婚は狂気の沙汰」(2002)「マルチュク青春通り」(2004)などのユハ監督の作品の助監督を務め、自身では短編映画「ある約束」(2011)「Room 211」(2002)で国内の著名映画祭に招待された経歴を持っている。そして本作で、監督になってから10年目にして、長編映画の監督デビューを飾った。
本作は監督にとって初めての長編映画。まずは映画が完成し公開されたときの感想を聞いてみた。
「とても感激しました。なぜかというと、ポストプロダクションの作業中に新型コロナウイルスが発生してしまい、いつ公開できるかどうかわからない状況でした。そんな中でも公開日が決まり、公開する直前に映画を完成させられることができたので本当に感激しました。でも、ポストプロダクションをかなり長い時間やっていたので、本当に終わるのだろうか本当に公開できるのだろうかと実感が湧きませんでした」
「人質 韓国トップスター誘拐事件」は、韓国映画界をけん引する大物俳優が、誘拐事件の人質となるトップスターを実名で演じた前代未聞の“リアル”サスペンス・アクション。主演俳優のファン・ジョンミンは、これまでにヤクザや刑事役など強靱な男性の役を演じてきたが、本作では人質になる役だ。劇中、ファン・ジョンミンは人質になり拘束された状態、上半身だけで感情を表現しなければならなかった。監督はそういった表現力や被害者としてのファン・ジョンミンの新しい顔、最も弱い立場に追い込まれて極限の状況の中でどういう演技を見せてくれるのかという思いから、シナリオ段階からファン・ジョンミンを念頭に置いて書いたという。
「最初にシナリオを見せた時はとても緊張しました。ファン・ジョンミンさんに『いや、これは僕じゃない、これはできない』と言われたら最初から書かなければならないので大変なことになってしまいますよね。でも幸いにもすごく楽しんでくれました。ファン・ジョンミンさんは意志が強いイメージを表現しながらも、一方では弱いところを見せてくれました。ただ弱いといっても決して屈服はしない、でもそういう中で弱いエネルギーも同時に見せてくれたと思います。強いイメージと弱いエネルギーが衝突し合っていたと思うのですが、それが自然に感じられました。私たちが今まで知っているファン・ジョンミンのイメージの枠から大きくはずれてはいないけど、その中でも新しい魅力を見せてくれたと思います」
撮影中、ファン・ジョンミンは「実際に自分だったらどうするか?」と悩みながら、アイディアもたくさん出して演じていったそうだ。
「ファン・ジョンミンさんは積極的にアイディアをたくさん出してくれました。コンビニの前で誘拐犯と初めて接触するシーンがあるのですが、私が書いたシナリオには、『犯人がファン・ジョンミンのことを刺激するが、怒りをこらえて避けてしまう』と書いていました。でもファン・ジョンミンさんは『自分だったら避けずに罵倒するようなことを言うだろう』と言ってくれて、そっちの方が自然だと思い修正しました。そのシーン以外にも本当にたくさんのアイディアを出してくれたので、一緒に作業してとても楽しかったです」
ファン・ジョンミンを誘拐する犯人役はドラマ「梨泰院クラス」のリュ・ギョンスやミュージカル界のトップスター キム・ジェボム、そしてファン・ジョンミン誘拐前に拉致された女性役を「イカゲーム」のイ・ユミが演じている。1000人以上のオーディションによって選出された実力ある役者たちだ。中でも誘拐犯グループのリーダー役キム・ジェボムは、感情を一切表に出さず、目的のためなら手段と方法を選ばない恐ろしい人物を演じている。
「キム・ジェボムさんは映画にあまり出演されてはいませんでしたが、ミュージカルや演劇ではとても有名な方で、名声は聞いていました。実際にオーディションに来てみたらとても怖かったです(笑)。彼の目の色が若干グレートーンなのですが、最初はカラコンを入れていると思いました。でも本人の目の色だそうで、特殊な目の色をされていました。何を考えているかわからないような、悪役ではあるけど悪役に見えないように演じてほしいとお願いしたところ、そういった役が一番上手く表現できると思いました。この映画を観た観客の中の一人のコメントで、コンビニのシーンで出てきた時は彼が誘拐グループのリーダーだとは気付かなかったけど、あとになって誘拐犯のリーダーと知って怖くなったとありました。そのコメントを聞いて私はとても嬉しかったんです。それがまさに私の意図したものでした」
劇中、拘束されたファン・ジョンミンは誘拐犯にボコボコにされるシーンがあるが、それでも最後まで希望を捨てず決して屈服しない姿を見せてくれる。緊張感あふれる先の読めない展開が続き、始終ハラハラさせられるストーリー展開にも心血を注いだという。
「後半にいくに連れてどうなるのか予測できない展開にするというのが私にとってとても大切なポイントでした。予測を裏切るような形で物語を展開させながら、でも一方ではみんなが期待しているような地点を目指していきたいと思って努力しました。ですから、まるで遊園地でジェットコースターに楽しく乗って、最後にパッと降り立ったようなそんな気分になってほしいと思ったので、それと似たような気持ちを観客に味わってもらうために努力しました」
監督は高校生の頃、リドリー・スコット監督の「ブレードランナー」を観てから自分もその作品のように表現する映画を撮りたいと思うようになり、映画監督の夢を抱くようになったそうだ。本作のシナリオにも好きな監督の作品を参考にしたという。
「リドリー・スコット監督以外にマーティン・スコセッシ監督やコーエン兄弟の作品も好きで、日本映画も好きです。今村昌平監督の作品が好きで、今回の映画のシナリオを書く時もよく観ていました。中でも『復讐するは我にあり』が好きで、参考にしながらシナリオを書きました。それから俳優さんたちにも一緒に観ようと声をかけて、その映画に出てくる俳優の演技について討論しました」
最後に監督に韓国映画界の強みについて尋ねると、「強みと言えば、観客の皆さんの水準が高いことだと思います。観客の皆さんが要求してくる水準が高いので、作り手はそれに合わせるために努力するようになります。ですから、これまでにはなかった新しいものを常に探さなければならないので、観客の皆さんにはいつも感謝しつつ、恐れている気持ちもあります。観客の皆さんが求めているのはリアルさと共感なので、リアルさを追求しながら映画としての楽しみも一緒にバランス良く作らなければならないと思っています。観客の皆さんの存在が強みになっています」と伝えた。
「人質 韓国トップスター誘拐事件」
【STORY】
唯一の武器、それは“演技力”―。犯人を騙さなければ、死!命がけの脱出劇がいま始まる!!
記者会見からの帰宅途中、ファン・ジョンミンが突然拉致された。パイプ椅子に縛りつけられた状態で意識を取り戻したジョンミンは、自分が大金目当で誘拐されたことを知る。しかもゲームを楽しむように彼を誘拐した若者たちは、ソウルを震撼(しんかん)させている猟奇殺人事件を起こした凶悪集団だった。
監督:ピル・カムソン
出演:ファン・ジョンミン「ただ悪より救いたまえ」イ・ユミ「イカゲーム」リュ・ギョンス「梨泰院クラス」
2021年/韓国/韓国語/94分/シネスコ/5.1ch/原題:人質/字幕翻訳:根本理恵/提供:ツイン、Hulu/配給:ツイン/G
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