<W解説>韓国政府は大音量による北朝鮮向け宣伝放送を再開させるのか? (画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国政府は大音量による北朝鮮向け宣伝放送を再開させるのか? (画像提供:wowkorea)
北朝鮮の無人機が先月、韓国の領空に侵入したことを受けて、韓国政府は北朝鮮が再び同様の行動を取った場合、南北軍事合意の効力停止を検討しているが、効力を停止した際、北朝鮮向け宣伝放送も再開できるかについて法律の検討に着手した。

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宣伝放送は、かつて南北軍事境界線付近に設置された拡声器を使って行われ、高出力のスピーカーからは韓国の歌や北朝鮮問題を含むニュースなどが流されていた。しかし、韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領(当時)と北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記が2018年4月に署名した「板門店宣言」を受け、同年5月に拡声器は撤去され、放送は中断されている。

北朝鮮は先月26日、無人機5機を、南北軍事境界線を越え韓国北西部の領空に侵入させた。最初に確認された1機はソウル首都圏の北部地域まで一時接近し、領空侵犯から約3時間で北朝鮮に戻った。残りの4機は北西部のカンファド(江華道)周辺で活動する航跡を見せたが、その後、姿が確認できなくなった。韓国軍は「明白な挑発行為だ」と批判している。

北朝鮮無人機の領空侵犯を受けて、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は4日午前、国家安保室と国防部、合同参謀本部、国防科学研究所から無人機への対応戦略に関する報告を受けた。その中で尹氏は北朝鮮が再び韓国の領土を侵犯した場合、南北軍事合意の効力停止を検討するよう指示した。

「9.19南北軍事合意」と呼ばれるこの合意は、2018年9月、当時の文大統領と金総書記が署名した「平壌共同宣言」の付属合意書だ。南北が軍事的緊張緩和のために努力することを申し合わせる内容で、南北は地上、海上、空中で一切の敵対行為をやめ、非武装地帯(DMZ)を平和地帯に変えるための対策を講じることとした。具体的には、軍事境界線上空への飛行禁止区域の設定、DMZ内にある監視所の撤収、黄海の北方限界線(NLL)付近の「平和水域」への転換と範囲の設定、板門店の共同警備区域(JSA)内での観光客の自由往来などが盛り込まれた。

当初は合意に盛り込まれた事項のうち、DMZ内の監視所(GP)の試験的撤去や、南北を流れるハンガン(漢江)河口での共同調査、朝鮮戦争で亡くなった兵士らの遺骨の発掘作業などが履行された。しかし、2019年にベトナム・ハノイで開かれた米朝首脳会談が物別れに終わったことで南北関係は再び冷え込み、合意の履行はストップ。専門家からは、合意締結後に南北境界地域での偶発的な衝突の可能性が著しく低下する効果があったとの評価もあるが、一度は試験的に撤去されたGPが再び設置されるなど、合意の意義は色あせたとの批判が強い。今回の無人機飛行も、明確な合意違反だ。

前述のように、韓国政府は再び北朝鮮が無人機を飛行させた場合、合意の効力停止も辞さない考えだが、北朝鮮向け宣伝放送の再開も検討している。

宣伝放送は1962年に始まった。前年に北朝鮮が韓国向け拡声器放送を開始したことに対する対抗措置だった。韓国は、40個余りの高出力のスピーカーを内蔵した拡声器を通じて韓国の歌や北朝鮮問題を含むニュース、気象情報などを北朝鮮に向けて放送。聴取できる距離は昼は約10キロ先まで、夜間には20キロ以上に達する。軍事境界線近くの北朝鮮軍部隊の兵士や住民が放送を聞けるため、北朝鮮は「威力的な心理戦道具」と懸念を示し、度々放送中止を求めてきた。

しかし、南北首脳会談が行われた2018年4月、南北の友好ムードの高まりを受け、会談の数日前に放送を中断。会談で文氏と金氏が署名した「板門店宣言」を受け、翌5月から軍事境界線付近の約10か所に設置されていた固定式と移動式の拡声器約40台が撤去された。現在、撤去された拡声器は解体された状態で保管されている。

南北関係発展法では、軍事境界線付近で拡声器を使った北朝鮮向け宣伝放送やビラ散布などを禁止している。しかし、「大統領は南北関係に重大な変化が発生するか安全保障、秩序維持、公共福利のため必要だと判断される場合、南北合意書の効力の全部または一部を停止させることができる」とも定めている。韓国統一部(部は省に相当)は軍事効力の効力が停止した場合、南北関係発展法で禁止している宣伝放送などの行為を再開できるか検討を進めている。統一部が「問題ない」と結論付ければ、韓国軍は宣伝放送を再開できる。

しかし、再開すれば、北朝鮮が反発するのは必至で、韓国の聯合ニュースは「南北関係はさらに悪化し、新たな挑発行為の火種になる懸念がある」と指摘している。

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