「流転の王妃・李方子」その知られざる人生を描いた創作オペラ、待望のアンコール上演。昨年の舞台(提供:lastqueen.net)
「流転の王妃・李方子」その知られざる人生を描いた創作オペラ、待望のアンコール上演。昨年の舞台(提供:lastqueen.net)
来る11月1日、2日、東京渋谷・さくらホールにて、平成28年度文化庁芸術祭参加公演「ザ・ラストクイーン 朝鮮王朝最後の皇太子妃」が上演される。

 ご存じだろうか。かつて韓国で王様に劣らぬ大葬列で見送られた日本女性がいたことを…。その名は李方子(りまさこ)。

 方子は日本の皇族・梨本宮家の長女として生まれた。後の昭和天皇のお妃候補とも言われていたが、ある日、自らの婚約を新聞記事で知る。なんと、そのお相手は朝鮮王朝最後の皇太子だった李垠殿下だった。

 政略結婚だったにもかかわらず、二人は真実の愛を育んでいく。しかしその人生には数々の悲劇がつきまとった。初めて訪れた朝鮮での幼い長男の突然の死と毒殺の疑い。その後日本の敗戦で平民になり、地位も財産も失う。病に伏した夫と連れて韓国へ渡ると、迎えたのは反日の嵐だった。その後、李垠殿下は亡くなるが、方子妃は日本に帰らず、夫の国・韓国で生きて行く道を選ぶ。一人残された方子妃は韓国の恵まれない子供達や障害児ための教育に打ち込んで行く…。

 昨年、この李方子妃の生涯を描くこのオペラ「ザ・ラストクイーン 朝鮮王朝最後の皇太子妃」が、日韓国交正常化50周年記念特別公演として新国立劇場で初演された。公演には皇族や旧皇族・旧華族の方々、駐日韓国大使やたくさんの音楽愛好家なども訪れ大盛況にて終了した。数多くのアンコールの要望が寄せられ、音楽評論家が「再演を望む」と評するなど高く評価され、今年11月に再上演が決定した。これまでは「悲劇の女王」として戦前の人生がクローズアップされてきたが、この作品は「運命に向き合う強い女性」としての新しい李方子像を、美しい音楽と共に描いて注目を浴びている。今年度の文化庁芸術祭参加公演として認定されている。

 主役の李方子妃を演じるのはオペラ歌手・田月仙(チョン・ウォルソン)。世界の舞台でオペラの主役をつとめるとともに、日本の総理大臣や韓国大統領の前でも特別公演を行う等、歌を通して日韓を繋いできたプリマドンナだ。自らが長年の構想のもと、このオペラを企画完成させプロデュースした。昨年は外務大臣表彰を受賞。歌手であると同時にノンフィクション作家の顔も持つ田月仙は制作の過程で李方子妃の真実を取材し、今幻とされてきた李方子妃直筆の日記、新発見された写真や手紙、韓国での福祉活動などを元にした、新しい事実をオペラに取り入れた。その様子はNHKのドキュメンタリーでも紹介され反響を呼んだ。

 さて、韓国で当初は冷ややかに見られながらも、福祉活動に身を捧げた方子妃は、いつしか「韓国の母」と呼ばれるようになる。そして1989年に亡くなった時は、準国葬となり葬列は数キロに及んだ。これは王様の葬儀よりも大規模だったといわれる。

 日本の皇族として生まれ、朝鮮王朝の皇太子の元へ嫁いだ李方子妃の存在は世界にもっと広く知られてもいいだろう。ふたつの祖国に捧げたその激動の人生が、いま鮮やかに蘇る。


オペラ「ザ・ラストクイーン 朝鮮王朝最後の皇太子妃」
 2016年11月1日(火) 19時30分  11月2日(水) 15時開演
 さくらホール(渋谷区文化総合センター大和田)


2016年11月 芸術祭参加公演 オペラ「ザ・ラストクイーン 李方子」主演 田月仙(チョン・ウォルソン) 予告60秒
2016年11月 芸術祭参加公演 オペラ「ザ・ラストクイーン 李方子」主演 田月仙(チョン・ウォルソン) 予告60秒




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