【ソウル聯合ニュース】韓国の映画監督で小説家のソン・ウォンピョン氏が2017年に発表した小説「アーモンド」が、このほど韓国で売上部数100万部を突破した。ソン氏は聯合ニュースの電話インタビューに「想像もしていなかったところまで来られたのは読者のおかげ」「感慨無量」と感謝の言葉を口にした。ミリオンセラー達成の要因を尋ねると、少し間を置いて「感情の無い少年というなじみのないキャラクターを通して私たちの普遍的な感情を見つめ直すきっかけになったからではないでしょうか」と答えた。この作品は日本でも翻訳出版され、書店員らが選ぶ「本屋大賞」で20年の翻訳小説部門第1位に選ばれている。 「アーモンド」は、脳の扁桃体が人より小さく感情を感じられない16歳の少年ユンジェが、傷を抱える少年ゴニ、感情豊かな少女ドラとの交流の中で少しずつ成長していく物語だ。 出版からしばらくたった今、手直しなどしたい部分があるか尋ねてみると、今年初めに読み返してみたところ、「もっとうまく書けるのに」と思った部分も多かったという。 この作品の読者は青少年から大人まで幅広く、反応もさまざまだ。ソン氏はある読者からの感想の中に、「『人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ』という言葉があるが、『アーモンド』は『遠くから見ると悲劇だが、近くで見れば喜劇だ』」と書かれていたことが今も記憶に残っていると語った。ユンジェやゴニの置かれた状況は悲劇ながら、そばで見るとその中にも友情と笑いがあることを感じてもらえたことが印象深かったと振り返った。 「アーモンド」は日本や米国、スペインなど海外約20カ国でも翻訳出版され、多くの読者に愛された。ソン氏は「違う文化圏で青少年期を過ごす人たちも韓国の読者が持つ感情と違いがない」と感じたという。 韓国では「アーモンド」が舞台化された。だが、ソン氏が監督として短編映画と長編映画を手掛けた実績があるにもかかわらず、映画は制作されていない。これについては「演劇とミュージカルは1回(その場)限りの感覚が強いが、映画のように映像化すると剥製になった感じがする」と答えた。子どもたちが小説「アーモンド」を通じて読む楽しさを初めて知ったという声も多く寄せられ、せっかく読まれているのだからもう少し活字のままでいてほしいという思いがあると説明した。 子ども時代の読書の価値を大切にするからこそ、ソン氏は児童図書を手掛けてきた。「童話で習作を続けてきたし、子どものための本を書くことが目標だった」と語る。大人の読書とは異なり、子どもは同じ本を繰り返し読むと指摘し、「子ども時代の読書経験は刻印のように残るもので、とても大切」だと強調した。 一方、別の長編小説「三十の反撃」も先月、22年本屋大賞の翻訳小説部門1位となった。「アーモンド」に次いで2年ぶりの快挙だ。受賞を受け、「文学的な価値がありながら面白さも評価される賞と聞いている。驚き、感謝する気持ち」と感想を述べた。 ソン氏は7~8月ごろ、新作の長編小説を出版する予定だ。小さな努力を通じて人生の意味を見いだす男の姿を描いた物語だという。
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