<W解説>今年の韓国版大学入学共通テストは易しくなる?尹大統領の指示で受験生ら混乱、発言の真意は?(画像提供:wowkorea)
<W解説>今年の韓国版大学入学共通テストは易しくなる?尹大統領の指示で受験生ら混乱、発言の真意は?(画像提供:wowkorea)
日本の大学入学共通テストに相当する、韓国の大学修学能力試験(修能)をめぐるユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の発言が波紋を呼んでいる。尹大統領は今月15日、イ・ジュホ社会副首相兼教育相から教育改革に関連した報告を受けた際、学校の授業で扱わない内容を出題から除くよう指示。「超学歴社会」として知られる韓国だが、修能はその結果によって大学はもちろん、その後の将来も左右するとも言われる重要な試験で、今回の尹大統領による指示で、受験生や保護者らの間では「今年の修能は易しくなる」といった憶測が飛び交う事態となっている。これを受けて教育部(部は省に相当)は「大統領の発言は『公正な修能』をめぐる指示だった」などと火消しに乗り出したが、野党「共に民主党」は「尹大統領の軽口で、罪のない生徒と保護者だけが大混乱に陥った」などと批判を強めている。

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修能は毎年11月に行われる。国公私立を問わず、大部分の4年制大学がこの試験を必須としており、大学は修能の成績と内申書、2次試験と合わせて合否を判定するが、修能が最大の比重を占める。「大学受験=修能」という図式が確立されている。

この日ばかりは受験生が優先され、さまざまな機関が協力。官公庁や一部企業は出勤時間を遅らせ、ソウルの公共交通機関は地下鉄やバスを増便する対応を取る。また、各地の空港では、リスニングの試験中、航空機の離発着が禁止される。カンニング防止のため、修能の試験会場は受験生に前日に知らされることから、場所を間違えるなどのトラブルが起きやすい。試験会場を誤り、遅刻しそうになった受験生をパトカーなどが送り届ける光景は日本でも毎年報道される。昨年の修能では、尹大統領もSNSで「全力で皆さんを応援します。ファイト!」とエールを送った。

この修能をめぐり、尹大統領は15日、イ教育相に対し、「学校の授業で扱わない内容は出題から排除せよ。学校の授業だけしっかり聞けば問題を解けるような出題にせよ」などと指示した。尹大統領は「3大改革」の一つに「教育」を掲げており、イ教育相への指示は私教育に偏重している韓国の教育を改め、公教育のさらなる充実を図ることを念頭に置いたものとみられる。尹大統領は今年の新年の辞で教育改革について「未来世代が望む教育が受けられるよう、教育課程を多様化し、誰にでも公正な機会が与えられるようにする」と語っている。

尹大統領の指示について、韓国メディアのヘラルド経済は「イ教育相への今回の指示を契機に、労働・年金・教育の3大改革の中で、相対的に遅れていると指摘されていた『教育改革』を本格的に推進するとの見方も出ている」と伝えた。

修能をめぐっては、2021年は歴代級の「難修能」と話題になった。また、昨年の修能の国語は過去2番目に難しかったとされる。

尹大統領はイ教育相に対し「公教育の課程で最初から扱っていない非文学の国語の問題や、学校では教えられない科目の融合型問題を出題することは、教育当局が(受験生を)私教育に追いやるものであり、非常に不公正で不当だと指摘した。

尹大統領は16日には大学入試担当局長のイ・ユンホン人材政策企画官の後任に、シム・ミンチョル・デジタル教育企画官を任命した。聯合ニュースは「大学入試担当局長が半年で交代するのは極めて異例といえる」と伝えた。

尹大統領の一連の発言を受け、受験生や保護者の間では「今年の修能は易しくなる」との憶測が飛び交う事態となっている。これを受けて、大統領室は「尹大統領は修能の難易度の話をしたのではない」と火消しに乗り出した。与党「国民の力」のチョン・ウテク議員は「公教育の教育課程にない修能問題が私教育費負担をさらに大きくするため、公教育の課程になく、私教育への依存度だけを高める問題類型は出題しないようにしようというのが尹大統領の発言の趣旨だ」と強調した。

しかし、野党や教育関係者からは尹大統領の発言に批判が出ており、教師労働組合連盟のキム・ヨンソ委員長は「修能の難易度調整問題は数十年間提起されてきた問題。一朝一夕に大統領の一言で政策が左右されるのは問題がある」と懸念を示した。韓国教員団体総連合会は「公教育を正常化するための基本的な方向性を示したと受け止め共感する」としつつ、「発言の趣旨、方向を生かしながらも、混乱をきたさぬよう、慎重な検討と政策準備が必要だ」と指摘した。

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